Ⅱ-1
(1)(a)
①Xが所有権を取得するまでの所有権の来歴を主張立証する。
・甲土地はもともとAが所有していた。
・2003年7月7日A所有の甲土地をBが買い取る旨の契約を締結しこのときBに所有権が移転した(民法176条。そうでないとしても同日の引渡し又は所有権移転登記のときにBに甲土地所有権を移転するのが当事者の合理的な意思であろう。)
・10月14日に催告による解除(民法541条)による解除の意思表示がなされ、民法545条1項により、遡及的に7月7日売買契約の効力が失われA所有となった(判例の直接効果説)、あるいは解除の債権的効果として所有権がAに移転した。
・11月1日贈与契約によりAからXに甲土地所有権が移転した。したがって甲土地はX所有である。
②Yが甲土地所有権の登記名義人となっている。
X所有にもかかわらずY所有の登記がなされており、Xはこのような物権の効力からみて是認できない登記の状態を是正するために所有権に基づく妨害排除請求権として、物権的登記請求権を行使する。
(b)(ア)
Yは(a)①Xによる甲土地所有に反論する。そのために、Xが主張する所有権移転の原因のいずれかについて否認するか、Xの主張しない所有権移転の原因を主張立証することとなる。設問についていうと、Xは遅くとも8月7日に、Bとの売買契約に基づき甲土地所有権を取得したと主張立証する。
ここで、10月14日のAとBとの甲土地売買契約解除がどのような意味をもつと考えられるか。解除はAB間での債権的効果しか有しないとすると、以上の事実のみによって、Yの抗弁が成立する。他方、直接効果説によると、Yは、Bが無権利者であったにもかかわらず545条但書きにより「第三者」として所有権取得を保護されることを主張立証する必要がある。そして、第三者として特に保護に値するといえるには、Bがいわば権利資格保護要件として登記を備えている必要があると解される。
Yは10月14日解除より前の8月7日所有権移転登記により登記名義人となっているから、545条但書きにいう「第三者」に当たる。
(2)(b)(ア)
解除によるBからAへの復帰的物権変動を観念することができる(解除の遡及効を認める見解に立つとしても遡及効は擬制に過ぎず、やはり復帰的物権変動を観念できる。)とすると、後から現れたYとは二重譲渡類似の関係にあり、民法177条により対抗問題となると解される(判例)。設問についていえば、登記を備えたBが確定的に甲土地所有権を取得する。
これに対して、民法545条1項但書きを、解除による原権利者Aへの物権変動の復帰を阻止して第三者への権利移転を可能にする規定と解する見解(新注民)によれば、解除との先後や登記の有無を問うまでもなくBが甲土地所有権を取得するが、登記の公示力を尊重する観点から妥当ではない。
(イ)
民法177条により後から現れたYが「第三者」として甲土地所有権取得を主張し得るのは、誰が先に登記を備えるかの自由競争の枠内にある「第三者」だからである。YがBからAへの所有権復帰を知っていたとしても、177条が「善意の第三者」ではなく単に「第三者」と定めている以上、Yは登記を備えることで確定的に所有権を取得する。
もっとも、Yが悪意でかつ所有権取得の態様が信義則に反し背信的な場合には、自由競争の枠内にあるとはいえないから甲土地所有権の取得を主張できない。
設問についていえば、Yの悪意に加え、競業者を困惑させるという反倫理的な動機にもとづいて所有権を取得したことを背信性の評価根拠事実として主張立証することが考えられるが、競業者の事業活動を不当に妨害しようとしたわけではなく単にXを困らせてやろうとしているに過ぎないから、背信性を認めることはできない。
(3)(b)(イ)
Yが所有権を確定的に取得した以上、その承継者であるDの権利主張が否定されることはない。いたずらに法律関係を錯綜させるおそれがあるからである。
仮に前主Yが背信的悪意者であったとしても、背信的悪意者は無権利者ではなく、自己の権利主張を否定されるにすぎない。Yから権利を取得したDは単純悪意者であるとは認められるが、設問からは背信性を根拠づける事情は認められない。
コメント ひとりでやってるので、これが正しいのか全く自信がない。コメントがほしい。。。
潮見『民法(全)』を一通り読んだ
読みました。
例えば、砂山晃一「与信取引法」みずほホールディングスほか『金融法講義』で言及されているような判例はあまり言及されていないですが、そのおかげで読みやすいのかもしれません。
そろそろ民訴を頑張ります。
民事の調査官解説
民法と民訴の調査官解説を読みます。
民法はリンク先のサイトでお勧めされていたものから、家族法と論証パターンがある判例を除いた以下の調査官解説。『民法総合事例演習』の必読判例・参考判例にも含まれています。
http://odenya2.hatenadiary.jp/entry/2014/02/02/105136
・最判平成14.03.28(矢尾渉)
事業用ビルの賃貸借契約が賃借人の更新拒絶により終了しても賃貸人が信義則上その終了を再転借人に対抗することができないとされた事例
民集56-3-662
・最判平成5.03.30(井上繁規)
一 同一の債権について差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合における差押債権者と債権譲受人との間の優劣
二 同一の債権について差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合と当該債権に係る供託金の還付請求権の帰属
民集47-4-3334
・最判平成18.02.23(増森珠美)
不実の所有権移転登記がされたことにつき所有者に自らこれに積極的に関与した場合やこれを知りながらあえて放置した場合と同視し得るほど重い帰責性があるとして民法94条2項,110条を類推適用すべきものとされた事例
民集60-2-546 潮見『民法(全)』に記述があるので要らなかった。
・最判平成18.07.20(宮坂昌利)
1 動産譲渡担保が重複設定されている場合における後順位譲渡担保権者による私的実行の可否
2 構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保の設定者が目的動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合における処分の相手方による承継取得の可否
民集60-6-2499 2の記述が古いこととかがイマイチかも。
民事訴訟法は、勅使河原『読解民事訴訟法』でも引用されていた以下の調査官解説
・最判平成16.07.06(太田晃詳)
共同相続人間における相続人の地位不存在確認の訴えと固有必要的共同訴訟
・最決平成13.01.30(高部眞規子)
取締役会の意思決定が違法であるとして取締役に対し提起された株主代表訴訟において株式会社が取締役を補助するため訴訟に参加することの許否
・最判昭和61.07.17(平田浩)
将来の賃料相当損害金の請求を認容する判決が確定した場合においてその後公租公課の増大等により認容額が不相当となつたときと損害金の追加請求