予備試験とか

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6.正当防衛、過剰防衛

Aの罪責

殺人罪、殺人未遂罪

Yに死亡の結果が生じたから、まず、Aの行為が殺人罪に該当するかが問題となる。しかし、Aが特殊警棒でYの頭部を強打した行為とYの死亡との因果関係は明らかでないから、殺人罪に該当しない。そこで殺人未遂罪が成立するかが問題となり、殺人の故意が認められるかが争点となる。頭部は身体の枢要部であって、そこをめがけて強打したことは、人を死なせる危険性が高く、殺人の故意を推認させる*1。しかし、強打といってもどの程度の強さであったかは不明であり、殺人の故意には合理的な疑いがある。この点を別にしても、鉄アレイで襲ってくるYから身を守ろうと必死で冷静ではなかったAが、Yが死んでしまうと分かって頭部を殴打したかは疑わしいから、殺人の故意には合理的な疑いがある。よって、殺人未遂罪は成立しない。

傷害罪、傷害致死

次に傷害罪の成立が問題となる。Aの特殊警棒による殴打により傷害の結果が生じたことは傷害罪の構成要件に該当する。また、AはBに「何とかしてくれ」と呼びかけることで、Yに有形力を加える旨の意思を連絡し、AはBに暴行を呼びかけ、かつ、YのベルトをつかんでBが暴行できるようにする重大な寄与をし、Bが1回目の体当たりをした暴行によりYに傷害の結果が生じている。よって、Bが実行した体当たりによる傷害罪の共同正犯の成立も問題となる。

さらに、特殊警棒による殴打には刑法207条が適用され、因果関係の挙証責任が転換されるから、傷害致死罪に該当する。刑法207条を傷害致死罪に適用することは罪刑法定主義に違反するとの批判もあるが、傷害罪と傷害致死罪が立証困難の点で異ならないだけでなく、傷害致死罪の規定より刑法207条が後に置かれていることから、適用を肯定すべきである。

正当防衛(36条)につき問題となる要件は、急迫不正の侵害、やむを得ずにした行為、防衛の意思である。

YがAに殴り掛かった不正の侵害は急迫性の要件を満たすか。AはYが本当に事務所に来るかもしれないと思い侵害を予期していたが、不正の侵害に対して自己の生命・身体を保全することは自然的権利の行使*2であり単に侵害を予期していただけでは否定されない。侵害を予期した以上は侵害回避義務が生じる場合があるとする見解によっても、Aがいたのは自分の職場であってその場に滞留する正当な利益が認められるし、侵害の予期は漠然としたものに過ぎず警察の保護を要請すべきであったともいえない。本件のAは侵害回避義務を負わない。よって、急迫不正の侵害の要件を満たす。

特殊警棒で頭部を強打した行為と、共同正犯者Bによる一回目の体当たり行為はやむを得ずにした行為の要件を満たすか。正当防衛は自然的権利の行使であって、Aに不正な侵害からの退避義務を課すことはできない。よって、反撃行為が防衛手段として相当であれば、反撃行為により生じた傷害の結果が不正に侵害されようとした法益に比べて不均衡であっても、相当性は否定されない。Y、A、Bの年齢、体格は同程度であって、Yの不正な侵害が鉄アレイによる殴打だったことから、攻撃者による侵害行為と防衛者による防衛行為の態様を実質的に衡量する武器対等の原則によっても、防衛手段として相当性がある。よって、やむを得ずにした行為の要件を満たす。なお、Yを事務所内に入れたのは、近所迷惑にならないようにであって、この機会を利用してAがYに積極的に加害する意思を有していたとは認められない。よって、自招侵害では防衛者の法益の要保護性が減少し「やむを得ずにした行為」が認められにくくなるとする説*3によっても、「やむを得ずにした行為」の要件を満たす。

防衛の意思が必要かについては議論があるが、本件では防衛の意思がないとは認められない。

よって、Aの傷害罪は成立しない。

なお、Bによる2回目の体当たりは、Aが認識していないから、故意がなく、Aは責任を負わない。

Aは無罪である。

 

Bの罪責

傷害致死

Aと共同してYに暴行を加える意思を通じたうえで実行した、Bによる2回の体当たり行為という暴行によりYが死亡する結果が生じたと認められれば、傷害致死罪の構成要件に該当し、共同正犯が成立する。しかし、Yの死因となった脳挫傷はAが特殊警棒で殴打したことによるものかもしれないから、Yの死亡についてBが責任を負うかが問題となるが、刑法207条により因果関係の挙証責任が転換される。

そこで、正当防衛が成立しないかが問題となる。

急迫不正の侵害の要件を満たすか。1回目の体当たりの時点では、AとYは取っ組み合いをしているから不正の侵害が現在している。2回目の体当たりの時点では、Yは立ち直そうとするところで、Bに攻撃を加える意思をなお有していたことが否定できないから、侵害が継続していたことを否定できない。

やむを得ずにした行為の要件を満たすか。2回の体当たりは、同一の機会に同一の法益に向けられたものだから、一個の行為として評価される。BとYは年齢、体格が同程度だから、武器対等の原則によれば体当たりはそれが2回行われたとしても防衛行為として相当である。これに対して、緊急避難よりも緩やかではあるが法益権衡が要求され、窓からYを突き落とす体当たり行為は、36条2項の「防衛の程度を超えた」(過剰防衛)に当たるとする反論が考えられる。

防衛の意思の要件も満たす。

よって、正当防衛が成立し、Bは無罪である。

なお、仮に過剰防衛に当たるとして、過剰性についての故意が認められるか。Bは2回目の体当たりをするとき、窓はブラインドが下がっていて、Yが転落する危険性のある行為であることを認識していなかった。よって過剰防衛の故意がないから、結局、Bは無罪である。

*1:間接事実による主要事実の認定は、ほとんどの場合、検察側のストーリーを土台に作られるから、弁護側がこの枠組みに乗ることは危険であると指摘し、事件の個性を無視していると批判するものとして、高野隆ほか『刑事法廷弁護技術』

*2:「座談会 正当防衛の成否は何で決まるのか」刑事弁護(96)高野隆発言参照

*3:佐伯千仭1984『刑法講義総論 4訂版』p.203。仮に積極的加害意思が認められてしまっても、過剰防衛を主張できる点で被告人に有利な解釈

1.不真正不作為犯、不作為犯と共犯

Aの罪責

Vに死の結果が生じているから、Aに殺人罪が成立するかが問題となる。

Vが転倒してから午後6時30分までに119番通報をしなかった不作為が殺人罪の実行行為に当たるか*1殺人罪の実行行為というには、刑法上の作為義務に違反したことと作為が容易だったことが必要である。119番通報は容易にできるから、刑法上の作為義務がどのような場合に認められるか、本件の場合に認められるかが問題となる。作為義務が認められるには、AがVの死亡までの因果経過を支配していることが必要である。加えて、殺人罪の作為と同価値性がある不作為でなければならないから、Aが保護を引受けたと認められる必要があると解される。

Vは許可なく立ち入ることが禁じられた特別室にいて、BはVのことを知っているものの、Aの指導的な立場に照らすと無断で救命措置を採る可能性は低い。よって、Vには生命に対する危険の排他的支配が認められる。また、AはVを道場に呼び寄せる先行行為により危険を生じさせており、保護の引受けが認められる。

なお、死の結果発生に対する強い積極的態度によりはじめて、作為による殺人と同視し得る強度の違法性が認められるとする見解*2がある。不真正不作為犯が成立するか否かは、不作為であっても「殺した」といえるかの問題であって、特別の主観的要素を要求すべき根拠はない。また、この見解によっても、死の結果を確実なものとしてAが実行行為のときに認識していた本件では、やはり殺人の作為と同視し得る。

AはVが死んでも構わないと思い実行行為に及んだから、殺人の故意が認められる。

Aには殺人罪が成立する。

 

Bの罪責

殺人罪の実行行為又は保護責任者遺棄致死罪の「保護する責任のある者」の身分が認められるには、Bが119番通報をする刑法上の義務を負っていた必要がある。しかし、Vの保護を引受けたと評価できる先行行為をBは行っていないから、刑法上の義務を負っていない。

Aによる殺人罪の幇助犯は成立するか。Bは、脳卒中による死の危険がVに生じたことをCに対して嘘で隠す作為*3によって、Vに生じた死の危険のAによる排他的支配を確実にし、結果発生を容易にしたと認められる。また、CがVの病状を知れば119番通報するかもしれないと思いつつ、それでも嘘をつく作為に及んでいるから、故意が認められる。よって、殺人罪の幇助犯が成立する。

*1:遅くともVが転倒した時点で救命措置を採るべきことを認識したと認められるから、この時点で実行の着手が認められるべき。転倒前からAに殺人の故意があったかについては合理的な疑いがある

*2:藤木、改正刑法草案12条も参照

*3:もし、不作為による幇助犯の問題であれば、作為があれば犯罪実現が困難になったという程度の因果性があれば足りるとする説と正犯が負う刑法上の作為義務と同程度に容易な義務でなければならないとする説とが対立する。本庄武「不作為による共犯」刑事弁護(74)p165によれば確立した判例が無い。

第20章 検察官面前調書

1.Vは「国外にいる」から「公判準備若しくは公判期日において供述することができない」と直ちに認められる。よって、刑訴法321条1項2号により証拠として採用できる。

もっとも、憲法37条2項は検察側提出の供述証拠を吟味する権利を被告人に保障していると解する見解があり、憲法違反であれば証拠として採用できないため問題となる。Vは外国人で公判廷に出頭できないおそれがあると検察側は知りながら、担当検事がVを呼び出した際に弁護人を立ち会わせるなどの措置すら採らず、被告人による証拠吟味の機会を失わせたのだから、憲法37条2項の権利の侵害であって、証拠として採用できないと主張することが考えられる。

しかし、証人とは公判廷に出てきて口頭証拠を提供する者をいい、憲法37条2項にいう「証人」もこの意味と解される。そうすると、Vの公判廷外供述に憲法37条2項の適用はないから、本件検面調書を証拠として採用しても憲法に違反しない。

2.来日予定があれば、「公判準備若しくは公判期日において供述することができない」の要件に当たらないから、証拠として採用できない。

3.検察官には国外退去の時期を遅らせる法令上の権限がない以上、検察官が国外退去処分を利用して被告人による憲法37条2項の権利の行使を妨げた等の事情がない限り、証拠として採用できる。

4.刑訴法321条1項柱書は、署名又は押印を録取の正確性を推定するための法定条件として定めているから、他の証拠により録取の正確性を認定することはできない。よって、証拠として採用できない。

5.犯行時のことを忘れたことを理由に証言がされなかったから、供述不能に当たる。

但書きにより「前の供述を信用すべき特別の情況の存するとき」であることも要件となる。そこで、傍聴席の雰囲気に畏怖して証言できなくなった可能性があることや、Wは忘れたと述べているので犯行時により近接した時点に録取された検面調書のほうが記憶が新しく信用すべきことを指摘する。

6.確かに、証人が記憶喪失の場合に供述不能要件に該当することを認めた判例(最決S29.7.29)はあるが、条文上例示された事由と同程度に、実質的に供述獲得が不可能な場合に限られると解釈すべきである。そう解さなければ、証人審問権を保障した憲法37条2項にも適合しない。

単に部分的に記憶が曖昧になったにとどまる本件のような場合には、供述不能とは認められない。

7.供述不能とは認められないから、調書(iii)の証拠採用を留保したうえでWが再度証人として証言したときに、仮に忘れたと述べたならば、証拠として採用できるかが問題となる。証言の際には、刑訴規則202条により裁判長が傍聴人を退廷させる等の措置を採るべきである。

仮に忘れたと述べた場合、調書(iii)を採用すれば異なる事実認定に至る可能性があり、前の供述と相反する供述若しくは実質的に異なる供述には当たるが、傍聴人を退廷させる措置を採ったにも関わらず忘れたの述べた場合には、相対的特信情況に当たるとは認められない。たとえ相対的特信情当たるとしても、証拠として採用することは証人審問権の侵害となる。

第19章 伝聞証拠の概念と同意

設問についての問い

1.共謀が要証事実であれば、伝聞証拠に当たる。しかし、Aの証言の立証趣旨はナイフを突きつけたこととXの言葉があいまって反抗を抑圧するに足りるものであったことである。よって、伝聞証拠に当たらない。

2.日記帳の存在じたいは犯罪事実の証明にとって無意味であって、不適切である。

3.裁判所による要証事実の認定は、被告人に対する不意打ち防止という適正手続の見地から、立証趣旨に拘束される(憲法31条)。そこでまず、検察官の立証趣旨にいう「被害の状況」の意味が問題になるが「本当に生命を奪われたり身体に重大な危険が及ぶかもしれない」とAが思い、反抗が抑圧されていたことであると考えられる。そうすると、Aが日記を書きながら怖いと感じていたことを要証事実と認めることはできないから、証拠として採用できない。

(自由心証主義を根拠に立証趣旨の拘束力を否定した場合も、結論は同じ)

4.X自身が書いたメモであれば、事実ではなくXの意思を述べたものであって、供述に当たらないから、証拠として採用できる。

Yが書いたメモであれば、Yが犯行計画をXに提出しXが了承したなど謀議行為の手段そのものと認められる特段の事情があれば証拠として採用できるが、Yの単なる覚書であって証拠として採用できない。

5.

6.公判廷外での録音録画は反対尋問の機会がないから伝聞証拠に当たるとする見解がある。しかし、伝聞とは事実の存否を伝える言語的表現をいうところ、DVDは言語的表現ではない。また、実質的に考えても、編集やカメラの設置位置には人為を介するが、機械的に記録され記憶・叙述の過程には誤りが混入するおそれがない。よって、伝聞証拠には当たらないと考えられる。

もっとも、公判廷外での取調べの録音録画は、直接主義の潜脱や恣意的な編集・カメラ位置の決定の危険があるから、刑訴法198条4項及び5項を類推適用して、被告人の同意がなければ証拠として採用できないと解すべきである。よって、包括代理権を有するXの弁護人が不同意の意見を述べた本件では証拠として採用できない。

7.検察官が立証趣旨を心理状態である意思の連絡とすることで証拠として採用できる。

8.本件ではXが犯行への関与じたいを否認しているから、裁判所としては、弁護人が同意した場合であっても、弁護人の同意がXの合理的意思に反しないか慎重に判断すべきであり、そのために必要に応じて刑訴法311条2項又は3項により被告人に質問すべきである。

非典型契約

旅行契約

「誌上法学講座 消費生活相談に役立つ旅行の法律知識」『国民生活』の「第三回 旅行契約の成立、手配債務」「第四回 旅程管理債務」「第五回 企画旅行契約における安全確保義務と特別補償責任」

http://www.kokusen.go.jp/wko/data/bn-hhkouza.html

履行補助者を債務者と同視するかつての通説には批判が強いことと、旅行業者が負う手配完成債務の内容はあくまで「専門的知識と調査能力を駆使して、 十分な旅行サービスを提供する能力のあるサービス提供機関を」選任、予約、確保する義務にとどまり旅行サービスを提供する義務そのものを負うわけではないことには注意が必要。

 

リース契約

江頭『商取引法 第七版』p.203-218

 

フランチャイズ契約

潮見『民法(全)』は非典型契約とするが、フランチャイザーの報告義務に関する最判H20.7.4がフランチャイザーを受任者とする委任契約の要素を認めていることを前提にすると混合契約では?加盟店のオーナーが経営指導に拘束されることから、事業者性や収入を考慮したうえで労働契約と性質決定されることもあり得る。

契約締結前の開示義務(中小小売商業振興法参照)、合理的な根拠に基づかない売上予想と不法行為責任、加盟金不返還条項の解釈、使用者責任・名板貸責任、優越的地位の濫用、商圏・テリトリー権、不安の抗弁権、流通合理化のための更新拒絶と取引継続への合理的期待、競業避止条項の論点がある。

家族法と会社法をはじめた

最近は担保物権(行き詰まり中)をお休みして、家族法会社法をやっています。

家族法は、潮見『民法(全)』を『離婚判例ガイド』と『現代相続法』の遺産分割と手続のながれの部分(岡部喜代子)で補っています。相続法改正のときの法制審議会の議事録もパラパラ読んでます。

会社法は、短答と会計士試験企業法の短答をやっています。

Ⅲ-11

(2)(a)乙土蔵にある美術工芸品及び材料がX所有であることを確認する。また、間接占有するYに命じて、所有者Xに占有移転するようBに対する指図をさせる。そこで、X所有をどのように主張立証するかが問題となる。

分析論によれば、前主Aと甲土蔵にある美術工芸品及び材料の所有権移転の合意及びこれから搬入される美術工芸品及び材料の先行的所有権移転の合意を内容とする2006年6月1日譲渡担保契約をしたことと、現在乙土蔵にある美術工芸品及び材料が2006年6月1日以降に甲所有で甲土蔵に置かれていたことがあることとを主張立証する。従来からの集合物論によれば、先行的所有権移転の合意のところは、集合物への附合の法律構成によることとなる。

集合物概念徹底説によれば、Xが甲土蔵にある美術工芸品及び材料の所有権を取得するのは、6月2日に送った担保権実行の通知がBに届いたことにより所有権移転の目的物が特定したときであって、それ以前に美術工芸品や材料は乙土蔵に移動しているから、取消しと財産返還請求権とを合一した性質を有する詐害行為取消権によることとなる。

 

(b)分析論によれば、Aが通常の営業の範囲内での甲土蔵中の美術工芸品及び材料の処分について処分授権をされていたことと、AとYとの売買契約と、当該売買契約がAの通常の営業の範囲内であることとで所有権喪失の抗弁を主張立証する。集合物論によれば、AとYとの売買契約と、当該売買契約がAの通常の営業の範囲内であることによって、甲土蔵中の美術工芸品及び材料が集合物から分離したことを主張立証する。そこで、処分が通常の営業の範囲内であったかが問題となるが、仕事をできなくなったAが在庫を一掃するためにした処分は、通常の営業の範囲内にはないからYの抗弁は認められない。予備的に、過失なく占有を取得する(192条。善意平穏公然は186条1項により暫定真実)ことで、美術工芸品及び材料の所有権を取得したと主張することが考えられるが、Aが直接占有したままで占有状態に変更がない場合にまで即時取得を認めることは取引の安全を害するから、Yの主張は認められない。

 

(3)Xは、甲土蔵中の材料に対するXの所有権を主張して民事執行法38条に基づき第三者異議の訴えを提起する。

Zの反論として、譲渡担保を担保という実質に即して考えれば、民事執行法59条1項が譲渡担保に類推適用されるか否かはともかくとして、通常の所有権者とは異なり第三者異議の訴えを提起することがそもそもできないと主張することが考えられる。しかし、民事執行法59条1項は限定列挙であって類推適用することができず第三者異議の訴え以外に債権者の担保的利益を守る手段がないことから、所有者として第三者異議の訴えを提起できると解すべきである。

そこでZは、甲土蔵中の材料にはZの動産売買先取特権が存在しているからXはZによる差押及び換価並びに配当手続におけるZの優先弁済を受忍することとなると主張する。なお、Zの売買代金債権は更改により貸金返還債権となっているが、先取特権は付従性により直ちに消滅するわけではなく、更改をした当事者の合理的な意思にしたがい存続している。

しかし、民法333条は先取特権が公示に欠けることから第三取得者が現れると先取特権が消滅することを定めており、この趣旨は譲渡担保権者との関係でも妥当するから、Zは先取特権のない単なる一般債権者であって、換価権を失っている。

さらにZは、3月の時点でXの集合流動動産譲渡担保の目的物は固定化していて、その後から甲土蔵に搬入された材料はB所有であると反論することが考えられる。しかし、Xの言い分通りならば、はじめて譲渡担保の実行通知を出したのは6月2日であって、それ以前には集合流動動産譲渡担保の目的物は固定化していなかったのであるから、甲土蔵中の材料にはXの所有権が及ぶ。Zの再反論として、Bは税金の滞納処分を受けた時点で、いわば事実上の倒産状態にあったのだから、集合物論又は集合物概念徹底説にたって、附合物に関する民法370但書後段を集合物に類推適用すると、倒産状態後の集合物への組入れ即ち占有改定は詐害行為に準ずるから、甲土蔵中の材料は集合物に含まれないと主張することが考えられる。

 

途中