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条例で定めるべき事項

実効性のある条例はどういう条例なのかという疑問から出発してつらつら書きました。ただ、全体として留意すべき点があって、法律や条例の制定がされても、判断の余地がある条文を自治体の職員が読んだとき、適用・執行を躊躇するかもしれないということです。そして、そのような不安をうめる力をもった法の解釈は国の見解や自治体間の照会、地域にある市民団体の主張であり、入手するコストの高い専門家の見解ではないことが多いのです。*1

 

 

自由や財産、プライバシーの権利を制限するには法律・条例の根拠が必要とされます。(侵害留保説)

もっとも、制裁目的でする氏名・法人の名称等の公表、行動の自由の制限(cf.警職法2条1項、自動車検問)、一定の情報の取得(cf.Nシステム、ごみ袋開封調査)については法律・条例上の根拠の要否が議論されています。

また、過去に発生したと思料される特定の犯罪に関してなされるのは(行政警察活動と区別される)司法警察活動であって、強制処分法定主義(刑事訴訟法197条1項但書)などによる別の規律に服します。

 

 条例は法律の範囲内でしか制定できません。(憲法94条)

 

行政機関内部で情報を共有するためには本来条例で根拠となる規定を設ける必要はありませんが、情報の共有が個人情報保護条例違反とならないように特別の規定を設ける必要がある場合もあります。

 

地方公共団体の議会は、法律の優位に相当するような権限を地方自治法96条2項により与えられています(議決事項の追加)。

 

実効性のある条例をつくるためには、以下のような手段が考えられます。

・即時強制の根拠となる規定を設ける。即時強制の事務を含む公務を適法に行う職員に暴行脅迫をすると刑法95条1項の公務執行妨害罪にあたる。また、適法な公務は偽計業務妨害罪、威力業務妨害罪によっても保護される場合がある。

・行政組織内部に関する定め(「しなければならない」「ものとする」)を設け、長等がこれと同様の訓令を発し、違反した職員がいれば任命権者が懲戒処分をする。

・近隣の住民の評判によって実効性を確保する。

・左側通行や建物の色彩に関するルールのように、強要するまでもなく、全員に周知して統一することで全員が得するようなルールを定める。(ただ、条例としてルールを定める必要があるかは疑問。)

法定外目的税

地方自治法14条3項の限度で罰則をつける。身体の自由又は財産の制限をうけたり、さまざまな業法で許認可等の欠格事由として「刑の執行を受けることがなくなった日から〜」と定められていたり、海外渡航の際に無犯罪証明がうけられないなどの不利益があり、これによって実効性の確保が期待できる。ただし、警察の協力がえられるものでなければ取締ることは難しい。また行動分析学の知見によれば、取締られた者に対する(自由や財産の制限そのものによる)負の弱化の(将来的な)効果は限定的とされる。

・過料を課し、地方自治法231条の3第3項により徴収する。ただし、行政手続条例などによる制約があり、使い勝手が悪い。また、行動分析学の知見によれば、取締られた者に対する負の弱化の(将来的な)効果は限定的とされる。

・情報公開や補助金給付などについて、私人に申請権を与えて行政側の応答に処分性をもたせて、抗告訴訟でも争えるようにする。要綱を定めるだけの場合と比べて、コミットメントが強くなる。

・条例による公法的な規制が、私法上の損害賠償請求又は差止請求に係る受忍限度の判断の基準とされることがある。

宝塚市パチンコ条例事件の判例を変更する。

 

条例のもつ機能として、長の定める規則よりも改廃が難しいこと、地方議会は長と比べて組織力の高い人々の利益を志向する傾向がありそれを反映した内容になりやすいこと、行政権は長に属するので長の協力がない限り狙い通りの政策が行われるか不透明なこと、多くの行政手続条例で意見公募手続が要求されていることから発案のときから施行までのタイムラグになることがあげられます。

 

なお、罰則を設ける場合には、とくに注意すべき点があります。

・適用範囲の限界がある。条例は地域における事務についての条例か委任条例でなければならない。「地域」とは区域、住民及び自治権をいい、これと合理的な関連性が認められれば「地域における事務」に当たる*2。さらに、罰則の行為規範としての性格からの問題として、条例は領域外では公布されておらず、不当な抜き打ち処罰は違法性の意識の可能性を欠き、そうでなくても罪刑法定主義に実質的に抵触する。住民でない者の区域内の行為(最判S29.11.24刑集8巻11号1866頁)や区域外の行為であっても区域内に直接的、現実的な結果を生じさせるべく行動した場合には、条例が適用される*3としても、例えば、インターネットを介した区域外からの匿名のやり取りや海域上の行為に条例上の罰則が適用できるかは疑問がある。

・訴因を特定する際にどのように記載すべきか、架空の事例を想定して証拠構造を検討したとき、供述証拠に偏りやすい要件はないか、問題があれば別の要件で行為を絞り込んで違法性の実質をもたせたり、過失犯処罰や推定規定を置くことも念頭に点検すべきです。

・法律上の犯罪との関係で、どのような場合に憲法94条(法律の範囲内)により特別関係になるか。他の犯罪と観念的競合かそうでなくても牽連犯となって、無意味な規定にならないか。

軽犯罪法上の罪などとの関係での罪刑均衡。

・規則に法定刑の定めを委任することはおそらく許されない。構成要件の定めを委任する場合にも、罪刑法定主義に由来する罰則特有の委任立法の限界があるとする説もある*4

*1:平田彩子2017『自治体現場の法適用—あいまいな法はいかに実施されるか』

*2:松本2002『要説地方自治法』p.124

*3:古田佑紀「条例における罰則の適用範囲」判タ(605)p.30

*4:『ワークブック法制執務