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メモ 職務質問

警職法2条1項は、警察官は、不審事由がある者を「停止させて質問することができる。」と定めている。

学説には厳格任意説といって、警職法2条1項に基づく権利自由の制限を全く認めないものもあるが、判例通説は、警職法2条1項は権利自由を制限する作用法上の根拠でありこれにもとづき有形力を行使できると解している。

 

・「停止」には、立ちふさがること、肩に手をかけること、自動車のエンジンキーを取り上げること(最決H53.9.22刑集32巻6号1774頁)を含む。

・追跡も、職務質問等の職務の目的遂行のために「もとよりなしうる」。(最判S61.2.27民集40巻1号124頁)

・所持品検査(不審事由のある者に自らのかばんの開披を強要すること、チャック等のあるカバンを開披し一瞥することを含む)は、「口頭による質問と密接に関連し、かつ、職務質問の効果をあげるうえで必要性、有効性の認められる行為であるから、同条項による職務質問に附随してこれを行うことができる」。(最判S53.6.20刑集32巻4号670頁)

・所持品検査を含む職務質問の実施中の証拠隠滅行為の制止は、「職務質問に付随し、いわばその実効性を確保するために(注1東京地判H14)」行うことができる。*1

・ホテル責任者に職務質問の要請をうけた警察官が、足を踏み入れホテルの居室のドアが閉まるのを防止することは、「職務質問に付随するものとして」行うことができる。(最判H15.5.26刑集57巻5号620頁)

 

司法警察活動であれば「強制(重要な利益の侵害)」に当たるような行為は、警職法2条3項により必ず違法になる。*2

・携帯品や着衣に手を入れその所持品を取り出し確認する行為は、所持品検査による重要な利益の侵害(捜索)に当たる疑いが極めて強い。*3

 

警察官職務執行法1条2項は、警察比例の原則を明文で定めている。権限行使の必要性、緊急性に応じた相当性が備わっていなければ違法となる。

最判H15.5.26刑集57巻5号620頁(前出) 警察官がホテルの責任者から料金不払や薬物使用の疑いがある宿泊客を退去させてほしい旨の要請を受けて、客室に赴き職務質問を行った際、宿泊客が料金の支払について何ら納得し得る説明をせず、制服姿の警察官に気付くといったん開けたドアを急に閉めて押さえたなど判示の事情の下においては、警察官がドアを押し開けその敷居上辺りに足を踏み入れて、ドアが閉められるのを防止した措置は、適法であるとした事例。

・同上 もし覚せい剤があれば直ちに保全策を講じなければ散逸するおそれがあることから、本件事情の下での所持品検査は適法に行い得るものであったとした事例。

・千葉地判H16.11.29裁判所ウェブページ  エンジンキーを取り上げ質問実施が可能な状況になったにもかかわらず、その後に原告を車外に引きずり出したことは国賠法上違法とした事例。

・岡山地判H18.2.14裁判所ウェブページ 道交法違反で逮捕する要件は具備していないが不審事由はある者の車両を停止させる際に、逃走の可能性に応じて交通事故の発生する危険性が相対的に低い手段をとらなかった本件停止措置は違法であるから、正当業務行為として違法性が阻却されることはないとして自賠法3条に基づく賠償を命じた事例。

・神戸地判H29.1.12裁判所ウェブページ 不審事由がないのに行った職務質問に際して原告が所持品検査を拒んだことを不審事由として、かばん検査の協力を執拗に求める等によりかばん開披を強要したことは、本件事情の下では必要性緊急性を欠き国賠法上違法とした事例。

 

警察官の停止措置が適法であるかについて争いが生じた場合、警職法5条に基づく犯罪の制止、道路交通法67条4項に基づく応急の措置であると主張することも考えられる。

*1:東京地判H14.3.12判時1794号151頁 所持しているメモ紙片の記載等について警察官が質問を行おうとしたのに対し、当該水溶メモ紙片を水の入ったコップに入れようとしたので腕をつかんで制止した事例。東京高判S61.1.29刑月18巻1=2号7頁判時1184号153頁 覚せい剤入りとみられるビニール袋を嚥下しようとしたため鼻をつまんで口を開かせようとするなどして口中から吐き出させた事例。

*2:警職法2条3項に挙げられる「身柄の拘束」や「連行」、「答弁の強要」以外の行政警察活動としての「強制」を禁止するものであるかどうかについては争いがあるところである。しかし、後述する最判昭和53年6月20日刑集32巻4号670頁は、「捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査においても許容される場合がある」としている。この判示は、捜索に至らない程度の行為であっても、「強制」と評価されれば、必要性や緊急性がいかに高くても許容されないことを意味していると考えられる。斎藤司2013年度刑事訴訟法演習龍谷大ローレジュメ第10回 。大谷直人(1996)「職務質問における「停止」の限界」 『増補 令状基本問題 上』p.67も同旨。

*3:斎藤司2016「刑事訴訟法の思考プロセス3」法セ6月号参照