予備試験とか

社会復帰を目指しています。

Ⅰ-3

普通預金口座aの普通預金契約の当事者は、保険代理店Aと信用組合Yである。口座の名義が「X代理店A」とされているだけではXを本人とする代理人による顕名があったとは認められない。そうすると、預金債権甲の債権者は普通預金契約の当事者であるAであると解される。

しかし、本当にそう解すべきかは、定期預金債権をはじめとして判例が展開してきたいわゆる客観説をふまえると検討を要する。客観説とは、預金の出捐者が預金債権者であるとする説であり、普通預金契約の当事者以外の者を預金債権者とすることを肯定する結論になる。私見では、普通預金契約には客観説を適用すべきではないと考える。

定期預金契約は預入金が最終の残高と一致しているから出捐者を確定して預金債権者とみることができた。これに対して普通預金債権は入金の度に債権の個数が増えるのではなく、債権としての同一性を保ったままその額が変動する性質をもっており、一般的に、入金の度に出捐者が異なることもあり得るから出捐者が誰かという観点から処理するのは限界がある(内田)。

 

Xは、Aの無資力により、Xの保険料債権を被保全債権として債権者代位権(民法423条)により払戻しを請求することが考えられる。

普通預金債権甲の債権者がAだとすると、信用金庫Yは、YとAとの契約にもとづく期限の利益喪失により履行期が到来した貸金債権乙と預金債権甲とを相殺する意思表示をして相殺の抗弁を主張することができる。これについては、YA間の契約の当事者でない第三者Xが不利益を被るのは不当のようにも思えるが、銀行との消費貸借契約に期限の利益喪失特約が付されていることは公知のことだから、やはり結論にかわりはない。

これに対して、Xはどのような再抗弁を主張できるか。

・保険契約者を委託者、Aを受託者、Xを受益者とする信託契約が成立していて、かつ預金債権甲は信託財産に属するから、固有財産に属する貸金債権乙と相殺することができない(信託法22条1項柱書本文)。

ここで、保険契約者とAとの信託契約が成立していたかが問題となる。設問によれば保険契約者が信託を設定する意思を明確に表示したとは認められないが、保険契約者とAとの契約の性質が信託契約であることはあり得るから検討を要する。信託法上の義務は委任に関する民法の規定の適用によっても導くことができ、信託の特色は受益者がうける特別な物権的救済にある。財産権の移転(設問では保険料としての金銭の引渡しによる金銭の所有権の移転)、当該財産についての委任(保険契約に関する事務の委任)(信託法2条1項)に加えて、分別管理義務が契約の内容となっているときには信託設定の明確な意思表示がなくても、信託契約の成立を認めるべきである(道垣内)。

設問について検討すると、XとAとの契約において分別管理義務が契約の内容となっていたとしても、保険契約者とAとの契約の内容となっていたと認めるべき事情はないから、信託契約は成立しておらずこの再抗弁は認められない。

 

コメント なるべく無難な見解をとるように、預金者の認定に関するややこしい議論に立ちいらなくてもよいように注意しました。

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