予備試験とか

社会復帰を目指しています。

Ⅰ-4

(1)(a)(ア)

Xは、500万円で冷凍近江牛1トンを買ったことを主張立証して、Yに対して引渡しを請求する。代金額がいくらかは本件の争点ではないが、代金は売買契約の要素(民法555条)だから代金額も主張すべきである。なお、条件や期限は、停止条件であれば契約に基づく履行請求の効力の発生を障害し、履行期限であれば履行請求権の行使を阻止するものとして、抗弁になるから、Xが主張立証する必要はない。

(イ)

Yは、代金支払い債務が履行されていないことを主張立証して、同時履行の抗弁権(民法533条本文)を主張することができる。Xは、再抗弁として決済条件を「引渡日の翌月10日」とする特約が付されているから代金支払い債務は弁済期にない(民法533条但書き)ことを主張立証する。Xの再抗弁は認められる。

(ウ)

Yの売買契約に基づく債務は、冷凍近江牛1トンを調達しXに引渡す種類債権であり、Y所有の冷凍近江牛1トンが腐敗したとしても債務が履行不能となることはない。しかし、この売買契約に基づく債務が、Yが物の給付をするのに必要な行為を完了(民法401条2項)するに至り、債権の目的物として特定された甲を引渡す債務になっていたとすれば、甲が滅失した場合には履行不能の抗弁が認められる。

そこで設問を検討すると、本件売買契約は引渡場所を「X会社第一倉庫」とする持参債務であり、持参債務の場合「物の給付をするのに必要な行為を完了」したといえるには現実の提供がされることは必要であるが、冷凍近江牛1トンがX会社第一倉庫に持ち込まれたことはない。したがって、Yによる甲の滅失を理由とする履行不能の抗弁は認められない。

(エ)

XはYに対して、本件売買契約に基づく義務として、6月末日の10日前までに6月末日までの日付で引渡日を指定する協力義務と、6月末日までに冷凍近江牛1トンを受領する義務を負うか。Yの電話での確認に対してXの担当者が「遅くとも6月末までに牛肉が必要であることはたしかなので、その10日前までには指定できるだろうと思う」と述べたことは本件売買契約の内容となっているといえるから、設問の事情の下では協力義務・受領義務ともに認められるというべきである。

Yが協力義務違反を理由として本件売買契約を解除できるとすると、解除によりXの請求を拒絶することができる。そこで設問について検討すると、Xは6月18日に引渡日の指定を催告している。この催告のときに期間の定め(民法541条)をしていないが、そのような催告も無効ではなく客観的にみて相当な期間が経過すれば解除権が発生すると解されるところ、7月末日に客観的にみて相当な期間が経過しており、本件売買契約の解除の意思表示をして冷凍近江牛1トン引渡し債務の履行を拒絶する。これに対して、Xは再抗弁として、解除前の8月1日に引渡日を指定したことを主張立証して、解除権を消滅させる。

Yは受領義務違反を理由として本件売買契約を解除することができるか。前述のように催告と客観的にみて相当な期間の経過とを認めることができるから、解除の意思表示をして履行を拒絶することができる。8月10日以前に解除の意思表示をすれば、Xによる受領義務履行の口頭の提供によって、解除権が消滅することはない。

 

(b)

YがXによる引渡請求に応じなかったものとして検討する。

Xは、本件売買契約の成立と、8月11日に冷凍近江牛1トン引渡し債務の履行期が到来したことに加えて、履行期の到来をYが知ったこと、損害の発生と額、不履行と損害の因果関係を主張立証して、冷凍近江牛1トンの引渡しの遅延賠償を請求することができる(改正後民法412条2項、415条1項)。また、Yは引渡債務の履行を拒絶しているから、本件売買契約を解除することにして、填補賠償を請求することもできる(改正後民法415条2項2号)。Yは8月10日以前に契約を解除すれば、債務不履行の責任を免れることができる。

 

(2)(a)(ア)

Yは、500万円で冷凍近江牛1トンを売ったことを主張立証して、Xに対して売買契約に基づき500万円の代金の支払いを請求することができる。

抗弁として、決済条件を引渡日の翌月10日とする停止条件の特約が付されていることをXが主張立証することが考えられる。これに対してYは、8月10日には支払期限が到来する不確定期限であると理由付否認をすることが考えられるが、私見では、停止条件とするのが明示的な合意であるし、牛肉を売却してYが得た収益を買掛債務の弁済に充てることが考えられるから停止条件と解することが通常想定しがたい(最判H22.10.14集民235号21頁参照)というべき事情もないから、Xのこの抗弁は認められる。

Xによる前述の抗弁が認められなかった場合、Xは牛肉甲が腐敗したことを理由に請求を拒絶できるか。双務契約の相対立する債務は、牽連性(この場面では存続上の牽連性)があり、一方の債務が履行不能となると他方の債務が消滅すると解する見解がある。しかし、反対債務が存続するか否かは契約を解除したか否かの問題であって、債務者の意思に委ねられていると解すべきである(改正後民法542条1項1号はこの見解を採る)。XはYの冷凍牛肉1トンを引渡す債務の履行を拒絶する意思が明確であること又は履行不能を理由として本件売買契約を解除することができる(改正後民法542条1項3号)。改正後の民法が適用される事件であったならば、Yは改正後民法567条2項に基づく再抗弁として、Xが受領の日時を指定しなかったため現実の提供ができず、6月20日に運送業者Aに甲を引渡して弁済の準備をし、Xにその旨を伝えて日時指定して受領することを促すことで口頭の提供をしたこと(民法493条)と、Aが冷蔵設備の故障により甲を腐敗させたことは本件契約の趣旨に照らしてXに帰責事由がないこととを主張立証して解除できなくする。このうち、契約の趣旨に照らしてXに帰責事由がないと認められるかが問題となる。AはXが冷凍近江牛を引渡す債務の履行過程に投入したいわゆる履行補助者であるが、履行補助者の故意・過失が当然にXの故意・過失と同視されることはない。契約の趣旨に照らして、受領遅滞の効果(民法413条)として軽減された注意義務である「自己の財産に対するのと同一の注意」をしたといえるかが問題となる。Xは冷蔵用倉庫をもつAに甲の保管を依頼しており、設問上Xにそれ以上の行為が求められるべき事情は特にない。よって、Xに帰責事由は認められない。結局、改正後の民法が適用されると、決済条件を不確定期限と解すればXの請求が認められることとなる。

もっとも、Yは、 冷凍近江牛1トンを引渡す債務も履行期が到来していることを理由として同時履行の抗弁権を主張することができる。この場合は引換給付判決がでる。

 

 

コメント 受領義務・協力義務の論証が書けませんでした。信義則上の受領義務を認めた最判が事例判決であることを意識して、申し訳程度に「「設問の事情のもとでは」協力義務・受領義務ともに認められる」というふうに付け加えました。債権法改正前に合格する自信がないので、改正後の民法だとどうなるか考えました。ほかにも色々自信がないです。

広告を非表示にする