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Ⅱ-8

(1)(a)名誉とは、人が自らの人格的価値について社会から受ける客観的評価をいう。

プライバシーとは、非公知の私生活上の事実であって、一般人の感受性を基準として他者に開示されないことを欲するであろうと認められるものをいう。なお、私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある情報であれば、フィクション等であってもプライバシーを侵害し得る。

名誉毀損及びプライバシー侵害に加えて、社会通念上許容される限度を超えた名誉感情の侵害を理由とする損害賠償請求を主張することが考えられる。

(b)(ア)1.特定の個人又は団体に対して、2.その人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させると普通人の注意と読み方を基準として認められる情報を、3.伝播可能な状態に置くこと、4.その故意又は過失である。これを本件についてみると、4.故意に、1.俳優Xに対して、2.俳優Xが12月10日遊び歩いている事実を摘示したり乱痴気騒ぎなどと論評を加え、また、補導歴を摘示し、3.加えて関西俳優研究会において50名に計310部頒布することで2の情報を伝播可能な状態に置きXの清廉なイメージを低下させたことが要件に該当する。

(イ)個人のプライバシーに該当する事実の情報を、その事実を知らない他者に開示することとその故意又は過失である。これを本件についてみると、12月10日に遊び歩いた事実はテレビ関係者その他のその場に居合わせた者のみが知る非公知の私生活上の事実であって、これを出版社に持ち込む行為や出版物として頒布する行為その他の他者に開示する行為は要件に該当する。

また、Xの顔のスケッチが無断で描かれたことは、プライバシー権の一内容である肖像権の侵害に当たると主張することが考えられる。

また、大麻所持の補導歴のような、犯罪の構成要件に該当する行為を過去に行った事実又はその嫌疑はプライバシーに該当するからプライバシー及び更生を妨げられない利益*1の侵害に当たると主張することが考えられる。週刊誌S誌で既に補導歴が公表され芸能マニアの間では公知の事実でありその伝達される範囲が当初において芸能マニアの間に限定されていたとしても、50名に310部頒布し、会員以外の者にさらに頒布されることを予定していたことからすれば、なお非公知の事実であり、プライバシーに該当する。

なお、名誉感情の社会通念上許容される限度を超えた侵害の主張については、名誉毀損やプライバシー侵害に吸収され*2、損害が認められない。

(c) Aはプライバシー侵害の主張についての反論として、社会的に広く存在と行動が注目される立場にある著名人であるXは、自ら職業を選択する過程でそのプライバシーの一部を放棄しており、その限りにおいてはプライバシー侵害に当たらない*3と反論することが考えられる。以下ではこれを本件に当てはめる。

12月10日に遊び歩いた事実を摘示した私生活上の行状に関する部分は、そのような事実を開示されることを清廉さを売りにする俳優Xが望まないことは明らかだから、プライバシーの放棄された部分には当たらない。

肖像は、俳優Xが自らの職業を選択する過程で、広く世間に知られることを包括的に承諾していると認められるから、肖像の顧客誘引力が法的に保護され得ることは格別、プライバシーの侵害に当たらない。

一般に、補導歴は、犯罪の構成要件に該当する行為があったという事実又は嫌疑であって、一方で、当時において社会が警戒、予防、抑制を働かせるためにその正当な関心事となり得るし、年月が経過しても事件それ自体が歴史的又は社会的な意義を有することがあり得るから、公共の利害に関する事項としての側面を有する。他方で、補導歴は個人のプライバシーのうちでも最も知られたくないものの一つであり*4、またプライバシーの他に更生を妨げられない利益も法的保護に値する。よって、不法行為が成立するか否かは、プライバシー及び更生を妨げられない利益と記事の目的や意義、出版時の社会的状況、当該記事において当該情報を含める必要性その他の当該記事を出版する理由に関する諸事情との個別具体的な比較衡量により決すべきである。

本件は補導歴に関する事案であって、補導歴が少年法6条の2に基づく警察官等の調査を受けた事実をいうとすれば、少年法61条が違法性判断の基準となり得るが、AはXの名前や顔のスケッチを用いて補導歴を摘示した記事を出版物『カネとヨクにまみれた関西の俳優・タレント百選』に掲載しているから少年法61条に違反する。また、情報の伝達の範囲も狭いとはいえずプライバシーや更生を妨げられない利益の侵害の程度は小さくない。よって、不法行為法上違法である。

(e)本件においてB社は記事の内容の編集に関与していないから名誉毀損的な言辞をB社の加害行為として帰責することはできない。よって、B社は名誉棄損の加害行為の主体とは認められない。また、B社はAがメンバーである小規模な同好会に本を引き渡したに過ぎず、流通には全く関与していないから、Xの名誉毀損が認められたとしても、B社は幇助(719条2項)の責任も負わない。

プライバシー侵害の主張については、関西俳優研究会のメンバーにとって週刊誌報道などにより公知の事実を摘示した記事を含む出版物を渡したに過ぎないから、関西俳優研究会との関係ではプライバシーに該当するとは認められない。

もっとも、補導歴を摘示した部分はプライバシーのうちでも最も知られたくないものの一つである。よって、仮に週刊誌の報道と比べて補導歴に関して、私生活上の事実又は私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある情報が少しでも付加されていれば、プライバシーとして法的保護を及ぼすべきであり*5、俳優Xの同意なく補導歴の記載を含む出版物を譲渡したことはプライバシーの侵害にあたるというべきである。以上のような前提のもとでは、補導歴の摘示によって生じた損害についてB社はAと連帯して損害賠償責任を負う。

 (2)「こんな親の顔が見てみたい」という侮辱的な言葉を添えてPの顔写真を載せたことは、Pが生存していたとすればプライバシー権の一内容である肖像権を侵害しているか、そうでなくても名誉感情を侵害していると認められる。Pはその学術分野においては公的人物に準じてそのプライバシー侵害を受忍すべきと認められるが、本件記事はPの研究と無関係だから生存していれば肖像権侵害が認められる。しかしながら、人格権は一身専属的な権利であって、Pの死亡により消滅する。死者に対して名誉棄損的な言辞があった場合であれば、遺族はその敬愛追慕の情を法的に保護されるが、本件記事によるPの客観的な社会的評価の低下による損害は、Xに対する名誉棄損的な言辞を前提とするものであって、Xに対する名誉棄損に吸収される。よって、Pに関する記述のみを理由とする請求は認められない。

(3)

(4)名誉が毀損された者は、名誉を回復するに適当な処分(民法723条)として、陳謝文言のある謝罪広告の掲載を裁判所が命じることを請求することができるか。そもそも、裁判所が陳謝を命じることが憲法19条の保障する思想及び良心の自由を侵害しないかが問題となる。過去の事実について陳謝することは、一般的には人格の核心に関わる精神活動と無関係だから、裁判所が陳謝を命じることは憲法19条に違反しない。もっとも、自らの名前での陳謝を命じることは憲法20条の保障する表現の自由の一内容である沈黙の自由を制約するから、名誉棄損の程度がAの沈黙の自由と衡量して受忍限度を超え、かつ事実の適示を取消すだけでは慰謝されない場合に限り、裁判所が裁量により命ずることができると解すべきである。これを本件についてみると、私的な遊興のみならず補導歴の適示を含むこと、俳優Xは清廉なイメージを含む高い社会的評価を有していることから、受忍限度を超える違法が認められる。そして、本件のように真実と認められる事実が適示された場合には事実の適示を取消すことを命じることではXの慰謝は期待できない。よって、裁判所はAに対して陳謝を命じるべきある。また、本件記事はXの出演するテレビ番組でも紹介されるなど、その内容がかなり流布しているから、全国日刊紙の社会面に陳謝文言を掲載することを命ずることは、名誉を回復するに適当な処分である。

 人格権たる名誉権は物権と同様の排他性を有する絶対権であって、名誉権に基づく妨害予防請求としてXのもとにある本6冊の廃棄を請求することが考えられる。Xのもとに本6冊がありすぐにでも頒布可能な状態にあることは、名誉が棄損される明白かつ具体的な危険と認められる。また、Aの有する権利である本を用いて自らの表現を発信する表現の自由(もっとも既に発表されているから廃棄を命じても事前抑制には当たらない)と比較衡量をしてもなお名誉毀損の程度は受忍限度を超えると認められる。よって、Xの請求は認められる。

 

コメント ぜんぜん分からない。まずい。他の方はどう書いているのか気になるところですが、ググっても見つからないですね。

慰謝料額が3000万円と認定されることがあり得ないことはわかるのですが(高くても300万円程度?)、相場がよく分かりません。俳優Xの出演が減り財産的損害が生じれば、300万円より高額な認定がされることもあり得るのでしょうか?

関西俳優研究会に属する特定小範囲の者に開示したに過ぎないからプライバシー権の侵害には当たらない(麹町中学校内申書事件最判参照)と反論するこも考えられそうですが、あまり筋がいいとは思えないので割愛しました。

機微情報の要保護性の根拠としては「第三者による利用が(名誉毀損その他の)現実の権利侵害をもたらす可能性が極めて高い(新保史生2013「ネットワーク社会における個人情報・プライバシー保護のあり方」p.202)」ことに求める見解もありますが、必ずしも一般的ではないかもしれないので、伊藤正己説によりました。

*1:逆転事件最判

*2:五十嵐清2003『人格権法概説』p.27参照。もっとも石に泳ぐ魚事件最判は、このような見解を採っていないと思われる

*3:プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会2018「名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン第4版」p.9

*4:前科照会事件最判伊藤正己補足意見参照、機微情報

*5:東京地判H18.3.31判タ1209号60頁AVをしばしば購入することを公言していたお笑い芸人が、実際に興味を示したり購入したAVの種類を週刊誌に掲載された事例