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第2章 任意同行(逮捕との区別)

設問についての問い

1.「留め置き」とは、不審事由のある者であって被疑者的立場にあるものを停止させる行政警察活動及び被疑者の移動の自由を制限する司法警察活動であって、警察官としては例えば令状発布までの時間稼ぎをする狙いがある。

2.不審事由のある者が自動車に乗っている場合、乗っていない場合と比べて、合理的な理由なく逃走を始めたときに停止させることが困難だから、エンジンキーを抜き取り自動車の運転を阻止する必要性・緊急性がある。

本件の留め置きは無令状の実質的逮捕に当たるか。確かに、X及びY子の意思が制圧されているが、制約されているのは単に移動の自由であって、車内における行動の自由や携帯電話を用いた外部との交通の自由は制約されていないし、取調べが行われて応答の自由が制約されたということもない。また、留め置きの場所は捜査機関の施設外である。よって、重要利益侵害処分には当たらないから、実質的逮捕その他の強制の処分には当たらない。

もっとも、任意処分も捜査比例の原則に違反してはならない。停止が長時間に及んだ場合、その間に被疑者の嫌疑が高まり司法警察活動に移行すれば許される移動の自由の制約は、例えば令状発布までの身柄の確保など、説得の手段の限度に必ずしも限られないものの、停止が長時間に及んだことが捜査比例の原則の相当性の判断において違法を導く事実となる。

3.緊急逮捕の要件が具備する程度の濃厚な嫌疑があることは、司法警察活動としての留め置きの必要性・緊急性の事実となる。

4.X及びY子らを引きずり出し採尿に適する場所に連行するという警察官らの行為は、強制採尿に当然に付随し、令状の効力の及ぶ強制の処分である。しかし、警察官らによる強制の連行に先立って、XとY子は令状を見せられていないから、警察官らの行為は刑訴法110条に違反する。仮に、令状執行着手前に令状を見せられないことが、手続について被疑者の協力を期待できずやむをえなかったとしても、令状の存在を知ることは、被疑者にとって強制の連行が形式的には法に則っているかを確認するために必要であり、逆に令状がなければ強制の連行に抵抗し拒絶し得ることとなるのであって、警察官らが令状の存在を直ちに伝えなかったことは適正手続を保障する憲法31条に違反する重大な違法である。また、令状の存在のみならず内容を知ることは、違法手続があったとき被疑者がその場で直ちに異議を述べるために必要だから、令状を呈示できる状況になったときにできる限り速やかに令状を呈示しなかったことは刑訴法110条に違反する重大な違法である。

5.警察官らは、強制の連行に先立って令状を窓に貼りつけている。「呈示」という用語を文理解釈すれば、警察官らは刑訴法110条に違反していない。また、このように「呈示」を解釈したとしても、警察官らは令状の存在と内容をXとY子に告知する機会を十分に与えているのだから、適正手続を保障する憲法31条に適合する解釈である。

6.令状を呈示することでY子の意思を制圧している。また、採尿を命じることは身体の自由の侵害及び羞恥感情の著しい侵害という重要利益侵害に当たる。よって強制処分に当たる。

7.X及びY子の違法な強制連行と採尿とは、採尿による証拠の収集という同一目的の手続であり、かつ、採尿は強制連行を直接に利用して行われた手続である。このように違法手続と直接の証拠獲得手続に密接な関連性がある場合、直接の証拠獲得手続である採尿手続に違法性が承継される。

覚せい罪取締法19条違反の罪は、違法捜査の抑止や司法の廉潔性といった要請よりも刑罰権の発動を優先させるべきほど重大な事案ではないから、本件尿の鑑定書は、違法収集証拠として排除することが相当である。

8.強制連行が仮に違法であったとしても、警察官らは令状呈示を試み、採尿の段階では令状を呈示していることから、警察官らが法軽視の態度から違法手続を行ったわけではないと認められる。また、覚醒剤の使用という犯罪の性質上、尿の鑑定書は犯罪の立証に不可欠である。したがって、違法捜査抑止の見地から検討しても、証拠を排除すべき程重大な違法ではなく、証拠能力を認めるべきである。

 

コメント 職務質問については大谷「職務質問における停止の限界」を参考にし、刑訴法110条の趣旨については後藤『捜査法の論理』所収の論文によりました。