予備試験とか

30歳までに弁護士になって岐阜帰還することを目指しています。地方自治、法と言語に興味があります。

Ⅰ-6

(1)(a)

Xは、Yから2億円でロイド船級規格の試験・検査を受けて合格した乙を買ったことと、Yが代金を4億円に値上げすることを要求しており乙を市場から調達して引渡す債務の履行を確定的に拒絶する意思を示していると認められることと、これと因果関係のある損害が生じたこと、損害額とを主張立証して、債務の履行に代わる損害賠償を請求する(415条)。

(b)

これに対してYは、理由付否認としてF社のディーゼル機関の製造が火災によりストップするという事情はX,Yともに契約締結時には予見しておらず、この場合に乙を調達する義務は、合理的な意思の解釈として代金額が値上げされた場合にのみ生じるか、そもそも本件のような特別な事情のある場合の調達義務は契約の内容となっていないと反論することが考えられる。合理的な意思の解釈によるべきという反論は、設問の火災のように「契約当事者の意思や評価とは関係ないところで生じた事態の変更に伴う危険の分配の問題(潮見『債権総論Ⅰ』p.222)」では合理的な意思の探求をする余地がないから採用できない。設問のような場合の調達義務は契約の内容となっていないとする反論は、Yが契約締結時にXに対して示した積算根拠等によっては具体的事情の下で成功することもあり得るが、設問からはそのような事情は明らかでないから採用できない。

Yは事情変更の法理による抗弁として、契約締結の際に前提とされたF社主力工場が通常通り操業しており乙を平常通り調達できるという事情が、火災によりX,Yの予想を超えて著しく変化し、実費が4億円まで上がり代金額の合意を形式的に維持することが一方当事者Yにとって著しく不公平になったからXにはYと乙売買契約について再交渉する信義則上の義務があること、Xは実費までの値上げに応じられないとして態度をかえず再交渉義務に違反したことを主張立証して、乙売買契約を解除する意思表示をすることが考えられる。しかし、工場の火災はX,Yの予想を著しく超えるとまでは認められないから、Yの抗弁は認められない。

(c)

Yは2004年3月10日の残金1億円の支払いをうけるのに先立つ2003年12月1日乙を引渡すことを合意しているから同時履行の抗弁権はないが、抗弁として、Xの信用不安とXの1億円支払いを期待できないことを主張立証して、合意には反するが信義則に基づく履行拒絶であったとして、債務不履行の主張に反論することが考えられる。しかし、Xの信用不安は造船業界の不況という一般的な事情か、うわさに基づくものに過ぎないから、Yによる信用不安の主張は認められない。なお、仮に認められるとしても、H所有の工場に根抵当権を設定する申し出をしており、これが十分な担保であれば再抗弁となる。

Xの債務履行に代わる損害賠償請求は認められる。

 

(2)

次に、どれだけの損害の賠償を請求できるかが問題となる。(以下略)

 

コメント 潮見説を引用したところは、吉政説に対する反論のつもりです。