予備試験とか

30歳までに弁護士になって岐阜帰還することを目指しています。地方自治、法と言語に興味があります。

H25司法試験 憲法

デモ行進不許可処分

A側:デモ行進は、表現の自由として保障される。表現の自由は、自己実現の価値を有し、政治的言論であれば民主的政治過程において自己統治の価値も有する点で極めて重要な権利である。また、道路は伝統的に表現活動と結びついている公共用物であって、その道路における「動く集会」であるデモ行進は、表現の自由のみならず集会の自由としても保障される。集団運動条例3条4号はデモ行進の不許可事由として憲法21条の保障する表現の自由及び集会の自由を制約するものだから、身体、生命、財産に危害が生ずる明らかに差し迫った危険がある場合をいうものと合憲限定解釈すべきである。交通事故の単なる不安は明らかに差し迫った危険とは認められないし、他の事情も要件に該当しないから、B県の不許可処分は違法である。

B県側:「集会の自由」は思想等の交換の場として集会の自由を保障するものであって、特定の見解のもとに集まった人々が特定の見解を発することに主眼があるデモ行進は、「集会の自由」ではなく「表現の自由」として保障される*1。道路の供用目的は、交通の用に供する目的であって、表現活動の場を提供することは本来の供用目的ではないから、デモ行進も本来の供用目的による制約をうけるというべきである。本件では、前回のデモよりも参加者が増えることが予測され、迂回した車両が住宅街で事故を起こす危険が認められる。本件不許可処分は適法である。

ᗷ県側:デモ行進をする自由は、憲法21条により表現の自由として保障される。もっとも、本件規制は、ある見解の表明じたいを禁止するものでも、表現内容に賛同できないことを理由とする規制でもなく、表現の時・所・方法に対する規制であり、言論市場に対する歪曲効果は限定的である。よって、表現内容規制とはその保障の厚さは異なり、表現の時・所・方法は生活の平穏を含む公共の福祉のために必要かつ合理的な制限に服する。したがって、B県集団運動条例3条4号は憲法21条に違反しない。迂回した車両による住宅街での交通事故のおそれ、日中の騒音被害は住民投票条例2号、飲食店の売上げ減少は3号に該当する事情だから、本件不許可処分は適法である。

A側:道路のような自由使用の公物における表現活動が、特に表現の自由として保障されるということは、他の利用を妨げることになっても保障されるということであり、供用目的による制約を受けない。生活の平穏をまもるためであれば、集団運動条例3条2項の附款を付してデモ行進許可処分をするというより制限的でない手段をとらなかったことは、表現の自由の制約として相当性を欠き、比例原則に違反し違法である。迂回した車両が事故を起こす危険が認められるのであれば、日時・場所を指定するという手段もある。また、見解表明の手段は生活平穏権により制約され得るといっても、私的領域への侵入とか、夜間の騒音のように、生活の平穏が重要な侵害を受ける場合であって、本件のような日中の騒音被害や飲食店の売上げ減少は住民投票条例2号及び3号に該当せず、デモ行進不許可処分の理由となり得ない。

 

教室使用不許可

A側:B県立大学は、従前からゼミが開催する講演会で教室を使用することを認めてきたのだから、合理的な理由なく不許可とすることは平等原則に違反し、違法である。本件についていえば、経済学部のゼミが教室使用を許可されたのと区別すべき合理的な理由はないから、平等原則違反の違法である。また、在籍する学生が研究を目的として教室を利用することは、憲法23条の学問の自由として保障され、教室使用を許可するか否かの裁量権を行使するにあたり配慮すべきである。

B県側:大学の教室は、教育及び研究をその供用目的とする施設であって、どのような集会であれば催すことができるかは施設の供用目的による制約をうけるから、政治目的の集会(実社会の政治的社会的活動)であれば開催を不許可とすることは許される。また、学部生は、研究者とは異なり大学の施設の利用について憲法23条による特別の保護を受ける地位にはなく、単に大学の管理運営の客体に過ぎない。

A側:本件開催予定だった集会は、デモ行進不許可に関するC教授の講演を含み、県議会議員による講演も一体として行われる予定だったのだから、教育目的及び研究目的の範囲内の利用である。また、そもそも憲法学は政治も研究の対象とする学問であって、賛成側反対側双方の県議会議員による講演はC教授の講演と一体か否かを論じるまでもなく、教育目的及び研究目的の範囲内である。県議会議員による講演が、政治目的の利用であって不許可とすることができるとしても、研究者であるC教授の講演の部分のみ教室利用を許可するなどの配慮をしなかったことは、学問の自由の制約として相当性を欠き、比例原則に違反し違法である。

 

コメント 供用目的を意識して書きました。許可使用不許可事件は、仲野2007「呉市学校使用許可事件判批」判例時報1956号を思い出しながら書きました。憲法ガールⅡを読んだら、論点漏れがかなりあったので反省。裁量審査のときの不当な動機の事実認定って難しそうと、ふと思った。

学問の自由については、中村「国立大学の法人化と大学の自治」と守矢「「学問の自由」に係る日本の憲法解釈論の性格をめぐって」

*1:渋谷『憲法起案演習 司法試験編』