予備試験とか

30歳までに弁護士になって岐阜帰還することを目指しています。地方自治、法と言語に興味があります。

UNIT 13 立証活動

重要論点

Q1

1)Xが証明責任を負う、会社法423条にもとづく損害賠償請求の請求原因となる事実は、1.Yの取締役としての判断決定による行為であること。本件でいえば、Yが取締役であり、その業務としての指示または監督により本件取引が行われたこと。2.任務懈怠。とくに本件では、Yが、友好的な関係にあるB株式会社に利益を得させようという動機から、A株式会社に生じるべき損害を知りながら敢えて取引(2014年9月1日から2017年8月31日まで、B株式会社に安価に穀物を廉売)をし、A株式会社に得られたはずの相当な対価が帰属しないという損害を与えたことが会社法355条が定める忠実義務に違反したこと。3.損害の発生とその額。本件でいえば穀物の相当な取引価額とB 株式会社に対する売値の差額。4.任務懈怠と損害発生との因果関係。である。

さらに、原告適格を基礎づけるために、XはA株式会社の株主であることの証拠を提出することとなる。(会社法847条)

Yが責任を免れるために、株式会社と取締役との委任契約の趣旨及び取引上の社会通念に照らして改正民法415条但書きが定める「責めに帰することができない事由」が存在しないことを証明する余地はあるか。忠実義務は、法令遵守義務のような結果債務とは異なり、忠実義務違反が認められるとき、すでにYの主観や行為態様に対する評価が含まれているから、帰責事由の不存在を証明する余地はない。

Yは抗弁として、本件取引を決定する過程が、判断までにどの程度時間をかけるべきかの裁量を考慮して著しく不合理とまではいえないこと、判断内容が当時の客観的事情から著しく不合理とまではいえないことを主張立証することが考えられる*1。この主張は、Yが経営判断として広い裁量を有するという行為規範としての実体法解釈と、自らの判断過程の合理性について証拠の偏在を理由にYにも証明責任を負わせることとを前提としているが、本件のようなYとA株式会社との利害対立が追求されている場合には、一般に取締役が会社に不利益な判断をする危険が大きいため経営判断の原則は適用されないから、前者の実体法解釈は否定される。

裁判所は、単に、Xが請求原因となる事実を立証できたかを審理判断すればよい。もっとも、Yが何ら立証活動をする必要がないかは別の問題である。

2)

3)

Q2

1)4号イ、ロ、ハ(証言拒絶権が保障されている事項が記載されている文書)は、3号(利益文書又は法律関係文書)に類推適用される。1号(引用文書)には類推適用されないが、訴訟上の信義則に照らして、専ら被申立人が有する権利は放棄されたとしても、証言拒絶権として保障された第三者の権利に配慮しなければならず、引用文書に当たらない場合もあると解すべきである。

3号後段(法律関係文書)と4号ニ(自己利用文書)については、法律関係文書はもともと自己利用文書を含まない概念だから、4号二を適用する余地はない。

4号ホは、1号及び3号に類推適用されるが、刑訴法47条が定める保管者の不提出とする判断が、本件民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性をも考慮して、裁量権を逸脱又は濫用するものであると認められるときは、裁判所は文書提出命令をすることができる。

2)民事訴訟法220条4号ニにいう専ら文書の所持者の利用に供するための文書とは、1.専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、2.開示により団体の自由な意思形成が阻害されるなどの不利益が生じるおそれが認められるもので、3.自己利用文書であることを否定する特段の事情がないものをいう。

本件文書は稟議書であって、1.内部文書であることは明らかである。

2.の不利益性については、自己利用文書に対する義務を免除する規定の保護法益を、文書の作成・保管を促進することの公益的な価値に求める趣旨から、具体的な記載内容を問わず肯定すべきとする見解*2がある。しかし、この解釈は、当事者間の公正さや証拠の偏在の防止により達成されるべき*3、真実に即した裁判の実現を不当に阻害する*4から妥当ではない。民事訴訟法220条6号によるインカメラ手続ができる*5から、類型的にではなく、具体的に、開示による団体の自由な意思形成を阻害するおそれを認定すべきである。問題文の記載からは、不利益性を満たすかは明らかでない。

本件訴訟は株主代表訴訟であるから、会社と株主の関係は、いわば内部関係であって、3.自己利用文書であることを否定すべき特段の事情が認められるようにも思える。しかし、会社法上、株主が閲覧や謄写を請求できる文書は限定的に定められており、Xは、本件稟議書を閲覧または謄写する請求権を有しないから、特段の事情は認められない。

3)本件通達文書は、既になされた意思決定の内容を伝達するものであって、開示が自由な意思形成を阻害する性質のものではない。また、具体的な事情はインカメラ手続により認定されるべきであるが、営業秘密に関する事項が記載されたものでもない。よって、2.不利益性が認められないから、自己利用文書に当たらない。

4)

Q3

1)

2)

 

コメント 

*1:経営判断の原則が適用されると抗弁に回るとする文献に、永石一郎「内部統制システム構築義務とその主張・立証責任の構造」p.383,4

*2:垣内2008「自己使用文書に対する文書提出義務免除の根拠」

*3:竹部晴美2013「最決H23.10.11」法と政治63(4)p.168

*4:長谷部新版p.215

*5:竹部2013p.168