予備試験とか

30歳までに弁護士になって岐阜帰還することを目指しています。地方自治、法と言語に興味があります。

刑法各論から試験勉強をはじめる

職を失って4月まで暇な予定なので、予備試験の勉強をします。

なにから勉強しはじめようか迷いましたが、なんとなく刑法から勉強することにしました。

刑法でも刑法総論のような高尚なはなしは苦手(『基本刑法』で済ませるつもり)なので、刑法各論からはじめました。

山口厚『刑法各論』はもっていたので、さらに井田『講義刑法学各論』と松宮編『ハイブリッド刑法各論』(松宮『刑法各論講義』まで読むと時間がかかり過ぎそうだったのでやめました。)を借りてきて、各罪の択一の過去問を解く作業と各罪の構成要件とその説明を書いていく作業を並行してしました。

殺人からはじめるのは気がのらなかったので、気になる犯罪からやっていきました。

あまりの知識のなさに自分でも驚きました。

刑罰法規の解釈でどの学者も使うのは、保護法益を述べて目的論的解釈をするやつですが、それ以外の解釈のしかたとして、判例説に近い説を選ぶよりも、刑罰法規の明確性とか罪刑均衡を意識した学説を好んで選ぶようにしています(答案を書くのが楽そう)。もちろん、判例説をとったほうが、当てはめで悩んだときに裁判例を参照できるというメリットはあるので、ちょうどいい落とし所をみつけていきたいです。

 

それがひと段落して、『事例から刑法を考える』を開いたのですが、、、(あとは察してください)

法規命令の法的統制

根拠

憲法41条、73条6号:憲法41条は戦前の学説の影響を受けて、侵害留保説をとりいれた解釈がされている。

罰則について憲法73条6号ただし書、罪刑法定主義:「特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない」(罪刑法定主義について、明治憲法23条が明文の規定を置いていたのと異なり、憲法31条は、コモンロー上の犯罪の制度を有するアメリカ法の影響を受けてか、明文で定めていないが、憲法31条が罪刑法定主義の根拠として解釈されている。)罪刑法定主義は自由を保障する意義を含んでいる。

課税要件について憲法84条:課税の公平を確保する意義を含んでいる*1

 

白紙委任の禁止(立法側の限界)

手続的な事項、技術的な事項、時機に応じて臨機に措置しなければならないことが予想されるような事項などについては個別具体的に命令に委任することができる(内閣法制局長官の国会答弁)。「時機に応じて臨機に措置しなければならないことが予想されるような事項」であることを理由とした法律による委任がかなりゆるやかな基準で認められることが確立しているが、これは、政令への委任を広く行っている金融機関再建整備法の制定の際に、ハッシーらアメリカ側の「政令の濫用」に対する批判に対して法制局の井手成三が示した「ポツダム緊急勅令に比べれば授権の範囲は狭い」「緊急の必要がある」という論拠に由来する*2

罰則については、法律で刑種と法定刑の最高限度を定めなければならなず、明治二三年法律第八四号のような一般的委任は許されない。法制執務研究会編 2007『新訂 ワークブック法制執務』はさらに、委任命令によるほうが義務の内容、義務違反の可罰性の程度に応じた妥当な法定刑を定められて、かえって(筆者注 自由を保障する)憲法の(筆者注 罪刑法定主義の)趣旨に沿うことを要求する。

課税要件については、納税義務者、課税物件、課税標準、税率を定めなければならない。特殊関税は例外。

 

法律の定めを補充する委任命令の適法性(行政側の限界)

規制行政分野の判例として、  命令がする規制の程度・範囲からみて規制が強力な場合には、  法律の側で明確な授権がければ、その命令は違法であるとした事例。(ケンコーコム事件  最判 H25.1.11民集 67 巻 1号 1頁)あらたに課徴金による規制の対象となる行為の定めを告示(不公正な取引方法の一般指定)から法律に格上げした独禁法の規定ぶりも参照。

法人税法65条の概括的な委任に基づく命令について、確認的な規定を設けることはできるが、創設的な規定は設けられず、法律の規定の理論上も実務上も解釈に疑問がなかったことについて命令でこれに反する定めをすることは当然できないとした裁判例(大阪銘板事件 大阪高判S43.6.28 行集19 巻6 号1130 頁など、以下の法人税法施行令の限定列挙と例示列挙の書き分けも参考になる)

法人税法
第六十五条 第二款から前款まで(所得の金額の計算)に定めるもののほか、各事業年度の所得の金額の計算に関し必要な事項は、政令で定める。
第百三十八条 この編において「国内源泉所得」とは、次に掲げるものをいう。
二 国内にある資産の運用又は保有により生ずる所得(所得税法第百六十一条第一項第八号 から第十一号まで及び第十三号から第十六号まで(国内源泉所得)に該当するものを除く。)
三 国内にある資産の譲渡により生ずる所得として政令で定めるもの
法人税法施行令
第百七十七条 次に掲げる資産の運用又は保有により生ずる所得(所得税法第百六十一条第一項第八号 から第十一号 まで及び第十三号 から第十六号 まで(国内源泉所得)に該当するものを除く。)は、法第百三十八条第一項第二号 (国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得に含まれるものとする。 (以下略)
第百七十八条 法第百三十八条第一項第三号 (国内源泉所得)に規定する政令で定める所得は、次に掲げる所得とする。 (以下略)

*1:荒井勇1975『税法解釈の常識』p73、神戸地判H24.11.27

*2:出口雄一2017『戦後法制改革と占領管理体制』第六章p.304

行政法規をとりあえず読む方法

ある法律を読むときであって、概説書や資格試験の対策本、官公庁のウェブページ上の概説と違う順序で条文を読むときや、これらの本が手許にないときに使える読み方です。

 

目次をみると、第一章が総則で、1条と2条を含みます。

1条は「この法律は、~し、もって(ここに究極の目的がはいる)することを目的とする。」という書きぶりの目的規定なので読み飛ばしましょう。(同様に読み飛ばすべき規定として努力義務規定)

2条は定義規定ですが、条文中の用語の定義は、これ以降の条文の中のその用語が初出するところで、「~(以下同じ。)」「~~(以下この章において「~」という。)」などのような書きぶりでなされていることも多いです。結局あやしい用語が出てきたら条文内検索をかけるのがよいと思います。

ちなみに、3条以下で「A等」という用語が出てきた場合、「Aその他のB(Aを含むB)」「Aその他B(Bは必ずしもAを含まないが、AとBは似たものというような意味合いがある。BがAを含まないことを含意する用例も多い。)」のような表現と違って、Aに「A等」に含まれる事物を限定する意味合いがないので、もしもいま読んでいる条で「A等」の定義を命令に委任していないなら、他の条で「A等」定義しているのではと疑った方がいいです。

「A等」ほどではないですが、「~に係る~」も一読しただけでは意味がはっきり分からないことがあるので注意が必要です。

 

次に、3条以下の行政処分の要件規定をチェックしていきます。

重文を用いた複雑な文で要件が規定されているときは、主文の主語は「…は、」と助詞「は」と読点(法制関係者はポツと呼ぶらしい)が用いられるのが通常で、従文は助詞「が」が用いられ読点がないのが通常なことを意識すると読みやすいです。

行政処分の要件規定は、一定の事由に該当するものに許可処分をしなければならないと定める規定、不許可処分をしなければならないと定める規定、墓地埋葬法10条1項のように要件に関する規定を欠き(白地要件規定)、目的規定を参照して要件が解釈されている場合などさまざまです。

例えば金商法は29条で「金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。 」と定めた後、29条の4で、登録を拒否しなければならない事由を定めています。

もっとも、法律の委任に基づく命令を読んではじめてその存在が分かる行政処分もあります。例えば労安衛法55条は「政令で定める要件に該当する」ときは禁止が解除されることを定めていますが、この委任に基づいて許可制が設けられています。

行政処分の要件規定をチェックしたら、下位の法規命令を含めて、その条文に関連する規定を読んでいきます。まずは処分の撤回に関する規定の有無から確認します。撤回についてバラバラに2つの条文があると面倒(例えば風営法8条と26条2項)ですが頑張ってください。金商法29条の登録の処分庁は内閣総理大臣とされていますが、雑則中にある194条の7第1項により金融庁長官に委任されているので、内閣総理大臣は登録処分をする権限を失っており、処分庁は金融庁長官です。さらに所管省庁のウェブページ上に処分基準を定めた通達がないか探していきます。その後、附則中の重要な規定の有無や特別法の有無をしらべます。行政処分の運用状況もしらべられるとよいです。

 

条文を読むときには、まず()外の条文、次に()外の条文と()内の条文、次は二重カッコ内も、という読み方がよくされます。

もっとも、( )内に「〜に限る/を含む/を除く。」と規定され、むしろ( )内の方に肝心なことが書いてある場合があるので()のある条文を読むときは注意が必要で、長いかっこだけを一旦読み飛ばす読み方(荒井勇1975『税法解釈の常識』p.25)の方が無難かもしれません。

 

次に、金商法第8章罰則の規定で参照されている条文を読んでいきます。これがめんどくさいです。相場観がないと、定められている法定刑が重いのか軽いのかよく分からずつらいです。

 

私法的な規定が定められていれば、それはそれで別物として読んでいく必要があります。公法上の義務であっても私法上の義務に転化するものと解される場合もあり、概説書などで調べるのが無難です。

 

法律の運用には行政指導が大きな役割を占めている場合がありますが、法律だけを読んでいてもその部分はよく分からないことに注意が必要です。

 

 

法律の条文は起草者なりの整理に基づいて条文の順序が考えられているので、たまには順番に読むのもよいかもしれません。ただ、必ずしも読みやすいものではなかったり、どんどん枝番号付きの条文が足されて、沿革をたどらなければ条文の整理のされ方が分からなくなっていることもあります。

 

 

条文の読み方の文献 

米田雅宏2014「「水質汚濁防止法」の適用 (特集 条文の使い方から学ぶ行政法)」法学教室 (408)p.19-23

山下貴司2017「議員立法のつくり方 : 改正ストーカー規制法と空家対策特別法などを題材に」臨床法務研究(19)p.51-64

白石忠志2020「チケット高額転売からの法学入門」法学セミナー65(8)p.56-61

その他の法令用語

・「準ずる」「類する」

『法令用語辞典 第九次改訂版』の項目「準ずる(林修三)」は、立法例として学校教育法附則2条「国民学校に準ずる各種学校」「国民学校に類する各種学校」をあげ、私立学校が認可を受けて国民学校と同様の課程をもったものを「準ずる」、市町村が国民学校と多少異なる課程を行うために設置する各種学校を「類する」と称した例をあげる。

参議院法制局長による浅野一郎・田島信威(1999)『最新 法令難語辞典』の項目「類する」は、「準ずる」が実質に重点を置いた場合に、「類する」が外形に重点を置いた場合に用いられ、ただどちらを用いるべきか一つに定まらない場合があるという。

 

・「確定」 

動かすことや修正・変更することができないように、はっきりと決めること、又は決まること。「破産債権の確定」(破一二四以下)などの用例がある。(『有斐閣法律用語辞典(第4版)』)

 

・財政に関する定め

「支弁」「支出」対外的に金銭を支出すること

「負担」 経費の最終的な拠出

(石原信雄 二橋正弘2000『地方財政法逐条解説』p.118)

「概算払」 あとで精算がされる。

 

・法的拘束力の程度

「よる」そのまま則ること。e.g.「申請により」「議により」憲法84条。 ちなみに「書面による」の「依る」は手段とするという意味。

「基づく」基礎とすること。細目については別の根拠によることを否定しない趣旨。e.g.「申請に基づき」「議に基づき」財政法3条

(荒井勇1975『税法解釈の常識』p.177)

 

行政処分を求める私人の地位

「申請」「請求」私人に申請権を与える。もっとも、社会福祉法人法45条の6第2項*1が「利害関係人の請求により又は職権で」と定めているように申請権を与えない趣旨と解釈される場合もある。

「申出」「求め」私人に申請権があるかは明らかでない。

 

 ・組織において事務を分掌させる地位の定め
「置く」 ある地位を新たに設けるという意味。単に「置く」と定めるだけで必置規制としての意味合いを持つが、私法人に対して必置規制をする場合には「置かなければならない」と定められる。
「命ずる」 すでに置かれた別の地位にある者をその地位に命じても問題ない。

 

・用いること

「使用」有体的な場合に「使用」を用いる。民法206条など。

「利用」知的財産法においては無体的な場合に「利用」を用いる。その他の分野では、「土地の利用」などの用例もみられる。

 

・付け加える表現

「もののほか」

「除くほか」

*1:「第三回日弁連公法系サマースクール」法セミ64(2)

備え付けた物、場所

・備え付けた物

「工作物」 一般には、労力を加えて、土地に接着して設備された物をいい、建築物、橋、堤防、トンネル、電柱、井戸、パイプライン、記念碑等がこれに当たる。用例として民法265条など。

「設備」 普通は、機械、器具その他の建設物に備え付けられる物を意味する。場合によっては、広く土地や家屋等の建設物を含む意味に用いられることもある。結局、その具体的範囲については、各法令の内容に応じて定まる*1電気通信事業法などを参照。

「施設」 「設備」と類似の意味に用いられるが、法令上は、物的設備とともに、それを動かすための人及びこれらを一体として捉えた事業活動全体を指す意味で用いられることが多い。

出典『法律用語辞典(第4版)』有斐閣

 

・公共の場所

「不特定かつ多数の者が利用する施設」

「公衆の出入りする場所」

「公共の場所」

 

・位置

「隣接」 くっついている

「近接」 必ずしもくっついているとは限らない

*1:筆者注 例えば、関税定率法別表95・08項にいう「巡回サーカス、巡回動物園又は巡回劇場の設備」があげられる。HS条約の公定訳と同様に正文にはない「設備」という語を補っているが、ここでいう「設備」には巡回サーカス又は巡回動物園の用に供する動物を含むと解されている。

公にすること

「公にする」という用語は最近ではあまり用いられず、「公表」「公示」「公告」等の方が用いられるという。

 

「公示」 一定の事項を周知させるために、一般公衆がこれを知ることのできる状態に置くこと。公の機関の発表について用いるのが例であるが、私人が一般に周知させるために発表する場合にも用いられる。 ≒「公にする」

「公表」 公にすることであって、積極的な周知(その形式は通常、官報、新聞紙等への掲載、インターネットの利用、掲示場における掲示等による)を伴う。但し、特殊な用法として金商法とくに166条4項。

「公告」ある事項を広く一般の人に知らせること。その目的、方法、効力等は一定でなく、それぞれの法律に定めるところによる。

「(公衆の)縦覧(に供しなければならない)」 一般に、書類、名簿等を誰にでも自由に見せることになっている場合に、これを見ること。異議の申立ての機会を与える等の目的で広く一般に見せる場合によく用いられる。選挙人名簿の縦覧(公選二三)、建築協定書の縦覧(建基七一)等に例がある。

「閲覧」 法令上は、文書の記載事項の確認、証拠としての援用等の目的で、関係者が官公署、会社等に備えてある記録、帳簿その他の文書の記載事項を調べる場合に用いることが多い。利害関係者による請求を待って見せる場合に多く用いられる。e.g. 「閲覧又は謄写の請求」

 

出典『法律用語辞典(第4版)』有斐閣