予備試験とか

30歳までに弁護士になって岐阜帰還することを目指しています。地方自治、法と言語に興味があります。

非典型契約

旅行契約

「誌上法学講座 消費生活相談に役立つ旅行の法律知識」『国民生活』の「第三回 旅行契約の成立、手配債務」「第四回 旅程管理債務」「第五回 企画旅行契約における安全確保義務と特別補償責任」

http://www.kokusen.go.jp/wko/data/bn-hhkouza.html

履行補助者を債務者と同視するかつての通説には批判が強いことと、旅行業者が負う手配完成債務の内容はあくまで「専門的知識と調査能力を駆使して、 十分な旅行サービスを提供する能力のあるサービス提供機関を」選任、予約、確保する義務にとどまり旅行サービスを提供する義務そのものを負うわけではないことには注意が必要。

 

リース契約

江頭『商取引法 第七版』p.203-218

 

フランチャイズ契約

潮見『民法(全)』は非典型契約とするが、フランチャイザーの報告義務に関する最判H20.7.4がフランチャイザーを受任者とする委任契約の要素を認めていることを前提にすると混合契約では?加盟店のオーナーが経営指導に拘束されることから、事業者性や収入を考慮したうえで労働契約と性質決定されることもあり得る。

契約締結前の開示義務(中小小売商業振興法参照)、合理的な根拠に基づかない売上予想と不法行為責任、加盟金不返還条項の解釈、使用者責任・名板貸責任、優越的地位の濫用、商圏・テリトリー権、不安の抗弁権、流通合理化のための更新拒絶と取引継続への合理的期待、競業避止条項の論点がある。

家族法と会社法をはじめた

最近は担保物権(行き詰まり中)をお休みして、家族法会社法をやっています。

家族法は、潮見『民法(全)』を『離婚判例ガイド』と『現代相続法』の遺産分割と手続のながれの部分(岡部喜代子)で補っています。相続法改正のときの法制審議会の議事録もパラパラ読んでます。

会社法は、短答と会計士試験企業法の短答をやっています。

Ⅲ-11

(2)(a)乙土蔵にある美術工芸品及び材料がX所有であることを確認する。また、間接占有するYに命じて、所有者Xに占有移転するようBに対する指図をさせる。そこで、X所有をどのように主張立証するかが問題となる。

分析論によれば、前主Aと甲土蔵にある美術工芸品及び材料の所有権移転の合意及びこれから搬入される美術工芸品及び材料の先行的所有権移転の合意を内容とする2006年6月1日譲渡担保契約をしたことと、現在乙土蔵にある美術工芸品及び材料が2006年6月1日以降に甲所有で甲土蔵に置かれていたことがあることとを主張立証する。従来からの集合物論によれば、先行的所有権移転の合意のところは、集合物への附合の法律構成によることとなる。

集合物概念徹底説によれば、Xが甲土蔵にある美術工芸品及び材料の所有権を取得するのは、6月2日に送った担保権実行の通知がBに届いたことにより所有権移転の目的物が特定したときであって、それ以前に美術工芸品や材料は乙土蔵に移動しているから、取消しと財産返還請求権とを合一した性質を有する詐害行為取消権によることとなる。

 

(b)分析論によれば、Aが通常の営業の範囲内での甲土蔵中の美術工芸品及び材料の処分について処分授権をされていたことと、AとYとの売買契約と、当該売買契約がAの通常の営業の範囲内であることとで所有権喪失の抗弁を主張立証する。集合物論によれば、AとYとの売買契約と、当該売買契約がAの通常の営業の範囲内であることによって、甲土蔵中の美術工芸品及び材料が集合物から分離したことを主張立証する。そこで、処分が通常の営業の範囲内であったかが問題となるが、仕事をできなくなったAが在庫を一掃するためにした処分は、通常の営業の範囲内にはないからYの抗弁は認められない。予備的に、過失なく占有を取得する(192条。善意平穏公然は186条1項により暫定真実)ことで、美術工芸品及び材料の所有権を取得したと主張することが考えられるが、Aが直接占有したままで占有状態に変更がない場合にまで即時取得を認めることは取引の安全を害するから、Yの主張は認められない。

 

(3)Xは、甲土蔵中の材料に対するXの所有権を主張して民事執行法38条に基づき第三者異議の訴えを提起する。

Zの反論として、譲渡担保を担保という実質に即して考えれば、民事執行法59条1項が譲渡担保に類推適用されるか否かはともかくとして、通常の所有権者とは異なり第三者異議の訴えを提起することがそもそもできないと主張することが考えられる。しかし、民事執行法59条1項は限定列挙であって類推適用することができず第三者異議の訴え以外に債権者の担保的利益を守る手段がないことから、所有者として第三者異議の訴えを提起できると解すべきである。

そこでZは、甲土蔵中の材料にはZの動産売買先取特権が存在しているからXはZによる差押及び換価並びに配当手続におけるZの優先弁済を受忍することとなると主張する。なお、Zの売買代金債権は更改により貸金返還債権となっているが、先取特権は付従性により直ちに消滅するわけではなく、更改をした当事者の合理的な意思にしたがい存続している。

しかし、民法333条は先取特権が公示に欠けることから第三取得者が現れると先取特権が消滅することを定めており、この趣旨は譲渡担保権者との関係でも妥当するから、Zは先取特権のない単なる一般債権者であって、換価権を失っている。

さらにZは、3月の時点でXの集合流動動産譲渡担保の目的物は固定化していて、その後から甲土蔵に搬入された材料はB所有であると反論することが考えられる。しかし、Xの言い分通りならば、はじめて譲渡担保の実行通知を出したのは6月2日であって、それ以前には集合流動動産譲渡担保の目的物は固定化していなかったのであるから、甲土蔵中の材料にはXの所有権が及ぶ。Zの再反論として、Bは税金の滞納処分を受けた時点で、いわば事実上の倒産状態にあったのだから、集合物論又は集合物概念徹底説にたって、附合物に関する民法370但書後段を集合物に類推適用すると、倒産状態後の集合物への組入れ即ち占有改定は詐害行為に準ずるから、甲土蔵中の材料は集合物に含まれないと主張することが考えられる。

 

途中

H29司法試験 憲法

設問1

リプロダクティブ・ライツ

妊娠をするか否かは個人の生き方の根幹にかかわる決定であり、幸福追求権として憲法13条により保障された人権である。この法律(以下、「法」という。)の15条8号は、幸福追求権を侵害し違憲無効だから、Bに対する収容及び強制出国命令書の発布は国賠法上違法である。

居住の自由

憲法22条1項は、居住の自由を保障し、日本国籍を有しない者を含む「何人も」権利を保障されることを定めている。居住の自由は、単なる経済的自由権ではなく、他人との交際関係を左右するという意味で人格形成にとって有益な側面を有するから、立法目的が重要であって、手段が必要かつ合理的なときに限り、制約が許される。Bは法4条4項により滞在期間3年で設問上更新をうけていない短期滞在者だが、滞在期間中は不当に滞在資格を奪われない権利を憲法22条1項により保障されていると解すべきである。

滞在期間を3年以上に延ばさず定住化を回避することは重要な目的ではあるが、母子の健康に配慮して3年の滞在期間を超えざるをえなくなったとしても、4年目には出国が可能となるのであって、妊娠を禁止行為とすることは必要かつ合理的な手段とはいえない。この法律の15条8号は、居住の自由を侵害し違憲無効だから、Bに対する収容及び強制出国命令書の発布は国賠法上違法である。

令状主義

憲法33条は、強制的な隔離という身体の自由の重大な制約を、裁判官による中立的・独立的な機関の事前審査に服させる規定と解される。この法律には裁判官の収容前の関与がなんら定められていないから、本件収容は憲法33条に違反し国賠法上違法である。

 

設問2

リプロダクティブ・ライツ

ある国の領域内に滞在することが権利として認められるのは、その国の国籍を有する国民だけであって、その国の国籍を有しない外国人が滞在する資格を与えられるか否かは、専ら国家の主権的判断、究極的には滞在権を有する国民の民主的な判断に属する。と国が反論することが考えられる。

しかし、私見では、人権は人間の尊厳に由来する前国家的な権利であって、出入国管理制度によっても人権侵害は許されない。あるいは、滞在資格の期間更新拒否の理由として妊娠を考慮することは消極的斟酌として許容されるが、滞在期間中に出国強制することは、その際に考慮された事情によっては憲法上の権利の制約に当たる。法15条8号に該当することを理由とする本件収容及び本件強制出国命令書の発布は、憲法13条が保障する幸福追求権のなかでも出産に関わる自己決定権の制約に当たる。自己決定権は、当人の人格的生存にかかわるから、やむにやまれぬ不可欠な公共の利益が目的であって、目的達成の手段にともなう権利制約が必要最小限度のときに限り制約することが許される。

国の主張として、「日本人男性との子が生まれて子が日本国籍を取得する可能性があり、そうすると結局家族全員が定住化して社会的・政治的な軋轢が生じるおそれがあり、ひいては「我が国の文化や秩序との調和を図」るという法1条の目的が達成できなくなるおそれがあり、やむにやまれぬ不可欠の公共的利益が認められる。家族が形成された後で分離することは、憲法13条が保障する家族の維持に関わる自己決定権を侵害することとなるし、未成熟子を含む婚姻生活における協力義務は憲法24条1項に由来するが、家族の分離はその円滑な履行の妨げとなるおそれがあるから、妊娠を禁止することは必要最小限度の手段である」と主張することが考えられる。しかし、公費で親子に適切に日本語教育を受けさせたり、公的な情報提供では日本語母語話者以外にも理解しやすい語彙を用いるなど、より制限的でない手段によって政治的・社会的な軋轢を回避すべきであって、必要最小限度の手段とまでは認められない。

よって、法15条8号は自己決定権を侵害し違憲無効だから、Bに対する収容及び強制出国命令書の発布は国賠法上違法である。

居住の自由

仮に、国の主張どおり出入国管理制度の枠内でしか自己決定権その他の憲法上の権利が保障されないとしても、居住の自由も保障されないとすると、憲法22条1項が「何人も」と定めた趣旨が没却されることとなるから、出入国管理制度に関する立法裁量は居住の自由を侵害しない限りで尊重されるものと解すべきである。国としては、マクリーン事件最判を援用して、憲法22条1項は国内における居住・移転の自由を保障したに過ぎないと主張することが考えられるが不当である。居住の自由の制約の違憲審査基準は、出産に関わる自己決定権の違憲審査基準よりも緩やかであって、定住化回避は重要な目的といえるし、妊娠を禁止して領域内での家族の形成をふせぐことは必要かつ合理的な手段であるから、法15条8号は憲法22条1項に違反しない。このような解釈によれば、Bに対する強制出国命令書発布に国賠法上の違法性は認められない。

令状主義

憲法33条は、刑事手続に適用される規定であって、本件収容は憲法33条に違反しないと反論することが考えられる。

確かに、憲法33条は直接には適用されないと解すべきだが、法18条の収容は、強制的な隔離という身体の自由に重大な制約をする行為であって、憲法33条が準用されると解すべきである。国としては、手続の公平を確保する手段として、審査官と警備官を分離して置き、手続の中立を確保しているし、審査官を裁判官の代わりにすることは認定の専門性を高めるためであって正当であり、違法はないと主張することが考えられるが、法務大臣の指揮監督下にある審査官には憲法33条の趣旨からみて十分な中立性があるとはいえない。よって、この法律の収容手続は憲法33条の趣旨に反し、本件収容は国賠法上違法である。

 

コメント

論点漏れ(違反行為の嫌疑に加えて身体拘束の必要性が要件となるか)があった。大橋毅、児玉晃一2009「「全件収容主義」は誤りである」移民政策研究、蟻川恒正「2017年司法試験論文式試験公法系第一問を読む」法律時報89巻9号89頁を参照

長期滞在者に人格形成的利益を理由として滞在権を認めるために、居住の自由の判例変更をすべきだと思っているので、短期滞在者の事案ですが、居住の自由も主張しました。あとは穏当に書いたつもり。「何人も」に言及したのは、近藤敦説に寄せるためです。

条文こそ引用されてないですが、問題文中で審査官を「置く」、警備官を「置く」(どちらも「命ずる」ではない)とされているのは、職能分離を答案で書かせるための誘導かなと思います。

民訴初学者

最近は、時間が空くと『ライブ争点整理』(後から法教410号も)と『民事訴訟第一審手続の解説』を読んでいます。(『アクチュアル民事の訴訟』と『よくわかる民事裁判 平凡吉訴訟日記』はもう読みました。)

穴があくまで読めば、民訴の基礎知識はなんとかなるだろうか。。。

 

その後、参照文献が明示されている概説書など(長谷部民訴、遠藤演習、勅使河原『読解民事訴訟法』)を比べ読みしたり、『設題解説民事訴訟法(二)』を読んでいます。

H27司法試験 憲法

設問1(1)

(公務員関係は公法関係ではあるが、A市と公務に就任する者との合意にもとづき成立するのであって、とりわけすべての公務員が任用により公務員関係にはいる現行の公務員法制の下では、公務員関係に私法の適用を排除する理由はない。*1正式採用拒否行為は、採用のときに留保していた解雇権を試用期間満了時に行使するものと解すべきである。)

正式採用拒否行為は、客観的に合理的な理由を欠き、又は社会通念上相当でないとき、裁量権を逸脱又は濫用した違法な行為であると解される。成績主義を採用するわが国の公務員法制の下では、A市には一方で勤務実績が優れた者の正式採用を拒否し、他方で勤務実績の劣った者を採用する余地はなく、Bの不採用は、客観的に合理的な理由を欠き裁量権を逸脱又は濫用した違法である。

同時に、合理的な理由のない別異取扱い、特に憲法14条1項後段に列挙された信条を理由とする別異取扱いであって、平等原則に違反し違法である。

(2)

客観的に合理的な理由の有無

正式採用拒否の客観的に合理的な理由には、Bの勤務実績のみならず、ひろくY対策課の職員としての適格性を含む。Y対策課の設置目的は採掘事業の安全性確保だけでなく、採掘事業の安全性に対する信頼を確保することも含み、Yの安全性に関する広報活動を業務に含む。BはY採掘事業に批判的な見解の持ち主であって、広報活動に不適格である。

社会通念上相当か

既に正式採用した者を分限免職する場合よりも、社会通念上相当であることは緩やかに肯定されるべきである。A市としてBに対し自らの見解を改めるように指導することが、Bの思想・信条の自由を侵害することとなり許されない以上、正式採用を拒否することは社会通念上相当である。

設問2

A市は正式採用をするか否かを判断するに当たり、勤務成績を含めてひろく採用候補者の適格性を判断し、その理由とすることができる。広報活動には、Y採掘事業に関する客観的・中立的な情報の提供やY採掘事業に関して反対派を含む市民と関係者との相互理解を促すことなども含まれるから、BがY採掘事業に批判的な見解の持ち主だからといって、直ちにYが適格性に欠けると判断する理由にはならない。また、CのようなY対策課の業務を妨害するおそれも認められない。よって、勤務成績が相対的に優れているBの正式採用を拒否する合理的な理由はなく、正式採用拒否は平等原則に違反し国賠法上違法である。

 

表現の自由

Bのシンポジウムにおける発言は、自己実現の価値を有するのみならず、政治的言論としての性格を有する点で民主的政治過程における自己統治の価値を有する。もし、採用前におけるY採掘事業に関する政治的言論を理由にB市が採用を拒否することができるとすれば、B市の職員を目指している者に対して萎縮効果が生じる。よって、本件正式採用拒否は表現の自由の制約である。本件はB採掘事業に反対するという特定の見解を理由とする採用拒否であって、特定の見解を思想の自由市場から排除することにつながるから、やむにやまれぬ不可欠な公共的利益のための制約でなければ許されない。本件正式採用拒否についてそのような事情はないから、表現の自由の侵害であって、国賠法上違法である。

 

感想

仮に、いろいろ理屈をつけて、別の理由ならば本件採用拒否は適法となりえたから、違法だけれど損害は生じていないと主張された場合、どう争うべきなのでしょうか?公務員の任用制度に目的なんて無いだろうから、余目町事件最判を援用して「不正な動機に基づく処分であって裁量権を濫用した違法」と主張するより、直に表現の自由を問題にする法律構成の方がよさそう。

*1:通説とは異なるが契約関係とする説として、阿部泰隆『行政法解釈学1』p.316。ほかに、室井力、下井康史など

H25司法試験 憲法

デモ行進不許可処分

A側:デモ行進は、表現の自由として保障される。表現の自由は、自己実現の価値を有し、政治的言論であれば民主的政治過程において自己統治の価値も有する点で極めて重要な権利である。また、道路は伝統的に表現活動と結びついている公共用物であって、その道路における「動く集会」であるデモ行進は、表現の自由のみならず集会の自由としても保障される。集団運動条例3条4号はデモ行進の不許可事由として憲法21条の保障する表現の自由及び集会の自由を制約するものだから、身体、生命、財産に危害が生ずる明らかに差し迫った危険がある場合をいうものと合憲限定解釈すべきである。交通事故の単なる不安は明らかに差し迫った危険とは認められないし、他の事情も要件に該当しないから、B県の不許可処分は違法である。

B県側:「集会の自由」は思想等の交換の場として集会の自由を保障するものであって、特定の見解のもとに集まった人々が特定の見解を発することに主眼があるデモ行進は、「集会の自由」ではなく「表現の自由」として保障される*1。道路の供用目的は、交通の用に供する目的であって、表現活動の場を提供することは本来の供用目的ではないから、デモ行進も本来の供用目的による制約をうけるというべきである。本件では、前回のデモよりも参加者が増えることが予測され、迂回した車両が住宅街で事故を起こす危険が認められる。本件不許可処分は適法である。

ᗷ県側:デモ行進をする自由は、憲法21条により表現の自由として保障される。もっとも、本件規制は、ある見解の表明じたいを禁止するものでも、表現内容に賛同できないことを理由とする規制でもなく、表現の時・所・方法に対する規制であり、言論市場に対する歪曲効果は限定的である。よって、表現内容規制とはその保障の厚さは異なり、表現の時・所・方法は生活の平穏を含む公共の福祉のために必要かつ合理的な制限に服する。したがって、B県集団運動条例3条4号は憲法21条に違反しない。迂回した車両による住宅街での交通事故のおそれ、日中の騒音被害は住民投票条例2号、飲食店の売上げ減少は3号に該当する事情だから、本件不許可処分は適法である。

A側:道路のような自由使用の公物における表現活動が、特に表現の自由として保障されるということは、他の利用を妨げることになっても保障されるということであり、供用目的による制約を受けない。生活の平穏をまもるためであれば、集団運動条例3条2項の附款を付してデモ行進許可処分をするというより制限的でない手段をとらなかったことは、表現の自由の制約として相当性を欠き、比例原則に違反し違法である。迂回した車両が事故を起こす危険が認められるのであれば、日時・場所を指定するという手段もある。また、見解表明の手段は生活平穏権により制約され得るといっても、私的領域への侵入とか、夜間の騒音のように、生活の平穏が重要な侵害を受ける場合であって、本件のような日中の騒音被害や飲食店の売上げ減少は住民投票条例2号及び3号に該当せず、デモ行進不許可処分の理由となり得ない。

 

教室使用不許可

A側:B県立大学は、従前からゼミが開催する講演会で教室を使用することを認めてきたのだから、合理的な理由なく不許可とすることは平等原則に違反し、違法である。本件についていえば、経済学部のゼミが教室使用を許可されたのと区別すべき合理的な理由はないから、平等原則違反の違法である。また、在籍する学生が研究を目的として教室を利用することは、憲法23条の学問の自由として保障され、教室使用を許可するか否かの裁量権を行使するにあたり配慮すべきである。

B県側:大学の教室は、教育及び研究をその供用目的とする施設であって、どのような集会であれば催すことができるかは施設の供用目的による制約をうけるから、政治目的の集会(実社会の政治的社会的活動)であれば開催を不許可とすることは許される。また、学部生は、研究者とは異なり大学の施設の利用について憲法23条による特別の保護を受ける地位にはなく、単に大学の管理運営の客体に過ぎない。

A側:本件開催予定だった集会は、デモ行進不許可に関するC教授の講演を含み、県議会議員による講演も一体として行われる予定だったのだから、教育目的及び研究目的の範囲内の利用である。また、そもそも憲法学は政治も研究の対象とする学問であって、賛成側反対側双方の県議会議員による講演はC教授の講演と一体か否かを論じるまでもなく、教育目的及び研究目的の範囲内である。県議会議員による講演が、政治目的の利用であって不許可とすることができるとしても、研究者であるC教授の講演の部分のみ教室利用を許可するなどの配慮をしなかったことは、学問の自由の制約として相当性を欠き、比例原則に違反し違法である。

 

コメント 供用目的を意識して書きました。許可使用不許可事件は、仲野2007「呉市学校使用許可事件判批」判例時報1956号を思い出しながら書きました。憲法ガールⅡを読んだら、論点漏れがかなりあったので反省。裁量審査のときの不当な動機の事実認定って難しそうと、ふと思った。

学問の自由については、中村「国立大学の法人化と大学の自治」と守矢「「学問の自由」に係る日本の憲法解釈論の性格をめぐって」

*1:渋谷『憲法起案演習 司法試験編』