行政法規をとりあえず読む方法

ある法律を読むときであって、概説書や資格試験の対策本、官公庁のウェブページ上の概説と違う順序で条文を読むときや、これらの本が手許にないときに使える読み方です。

 

目次をみると、第一章が総則で、1条と2条を含みます。

1条は「この法律は、~し、もって(ここに究極の目的がはいる)することを目的とする。」という書きぶりの目的規定なので読み飛ばしましょう。(同様に読み飛ばすべき規定として努力義務規定)

2条は定義規定ですが、条文中の用語の定義は、これ以降の条文の中のその用語が初出するところで、「~(以下同じ。)」「~~(以下この章において「~」という。)」などのような書きぶりでなされていることも多いです。結局あやしい用語が出てきたら条文内検索をかけるのがよいと思います。

ちなみに、3条以下で「A等」という用語が出てきた場合、「Aその他のB(Aを含むB)」「Aその他B(Bは必ずしもAを含まないが、AとBは似たものというような意味合いがある。BがAを含まないことを含意する用例も多い。)」のような表現と違って、Aに「A等」に含まれる事物を限定する意味合いがないので、もしもいま読んでいる条で「A等」の定義を命令に委任していないなら、他の条で「A等」定義しているのではと疑った方がいいです。

 

次に、3条以下の行政処分の要件規定をチェックしていきます。

重文を用いた複雑な文で要件が規定されているときは、主文の主語は「…は、」と助詞「は」と読点(法制関係者はポツと呼ぶらしい)が用いられるのが通常で、従文は助詞「が」が用いられ読点がないのが通常なことを意識すると読みやすいです。

行政処分の要件規定は、一定の事由に該当するものに許可処分をしなければならないと定める規定、不許可処分をしなければならないと定める規定、墓地埋葬法10条1項のように要件に関する規定を欠き(白地要件規定)、目的規定を参照して要件が解釈されている場合などさまざまです。

例えば金商法は29条で「金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。 」と定めた後、29条の4で、登録を拒否しなければならない事由を定めています。

もっとも、法律の委任に基づく命令を読んではじめてその存在が分かる行政処分もあります。例えば労安衛法55条は「政令で定める要件に該当する」ときは禁止が解除されることを定めていますが、この委任に基づいて許可制が設けられています。

行政処分の要件規定をチェックしたら、下位の法規命令を含めて、その条文に関連する規定を読んでいきます。まずは処分の撤回に関する規定の有無から確認します。撤回についてバラバラに2つの条文があると面倒ですが頑張ってください。金商法29条の登録の処分庁は内閣総理大臣とされていますが、雑則中にある194条の7第1項により金融庁長官に委任されているので、内閣総理大臣は登録処分をする権限を失っており、処分庁は金融庁長官です。さらに所管省庁のウェブページ上に処分基準を定めた通達がないか探していきます。その後、附則中の重要な規定の有無や特別法の有無をしらべます。行政処分の運用状況もしらべられるとよいです。

 

条文を読むときには、まず()外の条文、次に()外の条文と()内の条文、次は二重カッコ内も、という読み方がよくされます。

もっとも、( )内に「〜に限る/を含む/を除く。」と規定され、むしろ( )内の方に肝心なことが書いてある場合があるので()のある条文を読むときは注意が必要で、長いかっこだけを一旦読み飛ばす読み方(荒井勇1975『税法解釈の常識』p.25)の方が無難かもしれません。

 

次に、金商法第8章罰則の規定で参照されている条文を読んでいきます。これがめんどくさいです。相場観がないと、定められている法定刑が重いのか軽いのかよく分からずつらいです。

 

私法的な規定が定められていれば、それはそれで別物として読んでいく必要があります。

 

法律の運用には行政指導が大きな役割を占めている場合がありますが、法律だけを読んでいてもその部分はよく分からないことに注意が必要です。

 

 

法律の条文は起草者なりの整理に基づいて条文の順序が考えられているので、たまには順番に読むのもよいかもしれません。ただ、必ずしも読みやすいものではなかったり、どんどん枝番号付きの条文が足されて、沿革をたどらなければ条文の整理のされ方が分からなくなっていることもあります。

法律又は条例で定めるべき事項

自由や財産、プライバシーの権利を制限するには法律・条例の根拠が必要とされます。(侵害留保説)

もっとも、制裁目的でする氏名・法人の名称等の公表、行動の自由の制限(cf.警職法2条1項、自動車検問)、一定の情報の取得(cf.Nシステム)については法律・条例上の根拠の要否が議論されています。

また、過去に発生したと思料される特定の犯罪に関してなされるのは(行政警察活動と区別される)司法警察活動であって、強制処分法定主義(刑事訴訟法197条1項但書)などによる別の規律に服します。

 

 条例は法律の範囲内でしか制定できません。(憲法94条)

 

行政機関内部で情報を共有するためには本来条例で根拠となる規定を設ける必要はありませんが、情報の共有が個人情報保護条例違反とならないように特別の規定を設ける必要がある場合もあります。

 

地方公共団体の議会は、法律の優位に相当するような権限を地方自治法96条2項により与えられています(議決事項の追加)。

 

実効性のある条例をつくるためには、以下のような手段が考えられます。

・即時強制の根拠となる規定を設ける。即時強制の事務を適法に行う職員に暴行脅迫をすると刑法95条1項の公務執行妨害罪にあたる。

・行政組織内部に関する定め(「しなければならない」「ものとする」)を設け、長等がこれと同様の訓令を発し、違反した職員がいれば任命権者が懲戒処分をする。

・近隣の住民の評判によって実効性を確保する。

・左側通行や建物の色彩に関するルールのように、強要するまでもなく、全員に周知して統一することで全員が得するようなルールを定める。(ただ、条例としてルールを定める必要があるかは疑問。)

法定外目的税

地方自治法14条3項の限度で罰則をつける。身体の自由又は財産を制限するだけでなく、さまざまな業法で許認可等の欠格事由として「刑の執行を受けることがなくなった日から〜」と定められるなどされており、これによって実効性の確保が期待できる。ただし、警察の協力がえられるものでなければ取締ることは難しい。また行動分析学の知見によれば、取締られた者に対する(自由や財産の制限そのものによる)負の弱化の(将来的な)効果は限定的とされる。

・過料を課し、地方自治法231条の3第3項により徴収する。ただし、行政手続条例などによる制約があり、使い勝手が悪い。また行動分析学の知見によれば、取締られた者に対する負の弱化の(将来的な)効果は限定的とされる。

・情報公開や補助金給付などについて、私人に申請権を与えて行政側の応答に処分性をもたせて、抗告訴訟でも争えるようにする。要綱を定めるだけの場合と比べて、コミットメントが強くなる。

・条例による公法的な規制が、私法上の損害賠償請求又は差止請求に係る受忍限度の判断の基準とされることがある。

宝塚市パチンコ条例事件の判例を変更する。

 

条例のもつ機能として、長の定める規則よりも改廃が難しいこと、地方議会は長と比べて組織力の高い人々の利益を志向する傾向がありそれを反映した内容になりやすいこと、行政権は長に属するので長の協力がない限り狙い通りの政策が行われるか不透明なこと、多くの行政手続条例で意見公募手続が要求されていることから発案のときから施行までのタイムラグになることがあげられます。

その他の法令用語

・「準ずる」「類する」

『法令用語辞典 第九次改訂版』の項目「準ずる(林修三)」は、立法例として学校教育法附則2条「国民学校に準ずる各種学校」「国民学校に類する各種学校」をあげ、私立学校が認可を受けて国民学校同様の課程をもったものを「準ずる」、市町村が国民学校多少異なる課程を行うために設置する各種学校を「類する」と称した例をあげる。

参議院法制局長による浅野一郎・田島信威(1999)『最新 法令難語辞典』の項目「類する」は、「準ずる」が実質に重点を置いた場合に、「類する」が外形に重点を置いた場合に用いられ、ただどちらを用いるべきか一つに定まらない場合があるという。

 

・「確定」 

動かすことや修正・変更することができないように、はっきりと決めること、又は決まること。「破産債権の確定」(破一二四以下)などの用例がある。(『有斐閣法律用語辞典(第4版)』)

 

・財政に関する定め

「支弁」「支出」対外的に金銭を支出すること

「負担」 経費の最終的な拠出

(石原信雄 二橋正弘2000『地方財政法逐条解説』p.118)

 

・法的拘束力の程度

「よる」そのまま則ること。e.g.「申請により」「議により」。 ちなみに「書面による」の「依る」は手段とするという意味。

「基づく」基礎とすること。細目については別の根拠によることを否定しない趣旨。e.g.「申請に基づき」「議に基づき」

(荒井勇1975『税法解釈の常識』p.177)

 

行政処分を求める私人の地位

「申請」「請求」私人に申請権を与える立法者意思を表す。

「申出」「求め」私人に申請権があるかは明らかでない。

団体

・団体

「団体」 共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるもの。 (組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律2条)

「法人に準ずる団体」 法人でない団体であつて、事務所の所在地、構成員の資格、代表者の選任方法、総会の運営、会計に関する事項その他当該団体の組織及び運営に関する事項を内容とする規約その他これに準ずるものを有しているもの。 (河川法施行規則第三十三条の八)

「世帯」 一般に、住居と生計を共にする者の集まり及び独立して住居を維持する単身者を、一つの生活単位として把握する用語として用いられるが、その具体的内容は、各法令によって異なる(住民台帳六、国勢調査令二②等)。戦後の民法改正によって「家」制度が廃止されたために、法律上、家族に類する生活共同体を取り上げる必要のある場合において、「家族」に代わってこの語が用いられることが多い。 (『有斐閣法律用語辞典(第4版)』)

 

・(行政主体に限らない)団体意思を形成する働き

「監督」 (行政機関間の監督に限らない一般的な意味は)下級のものがその属し又はその機関として行為する団体の一般の利益を害することがないようにすることを目的とする、上級のものが下級のものに対してする継続的注意及び罰。 (筧克彦1920『皇国行政法 上』p.130を参考にした)

「指揮」 (行政機関間の指揮に限らない一般的な意味は)上級のものが下級のものに命じて、上級のものの意思を遂行させる作用。監督が消極的作用であるのに対し、指揮は積極的作用である点で異なる。 (同上)

 

・組織において事務を分掌させる地位の定め

「置く」 ある地位を新たに設けるという意味。単に「置く」と定めるだけで必置規制としての意味合いを持つが、私法人に対して必置規制をする場合には「置かなければならない」と定められる。

「命ずる」 すでに置かれた別の地位にある者をその地位に命じても問題ない。

国等の機関の判断

・事情

「事情」e.g.警職法3Ⅳ「許可状は、警察官の請求に基き、裁判官において已むを得ない事情があると認める場合でなければ、勾留状を発することができない」、「考慮すべき事情」、「推認させる事情」

「事由」理由となる事情 cf.荒井勇1975『税法解釈の常識』p.186  e.g.刑訴法206Ⅱ「裁判官は、その遅延がやむをえない事由に基づく正当なものと認める場合でなければ、勾留状を発することができない」、「違法事由」

 

・代表的な不確定概念

「公益上必要がある」積極目的 cf.織田萬1934『日本行政法原理』p.657

「公益を害する」消極目的 cf.同上

「おそれ」 危険

「正当な理由なく」水道供給拒否に関する最判H11.1.21民集53巻1号13頁参照。また、犯罪の構成要件の一部の表現としてもよく用いられる。類義語である「故なく」「みだりに」は現在ではあまり用いられない。

 

・不公正 cf.独禁法による不公正な取引方法規制の公正競争阻害性に関する議論

「不当に(してはならない)」 行為を認定するものが、行為要件の具備に加えて不公正さの立証責任を負う。

「正当な理由なく(してはならない)」 行為者が公正さの立証責任を負う。ただし、罰則の構成要件の一部である場合には検察官が証明の負担を負う。

 

・根拠があると思うこと

下の用語が用いられる場合ほど厳格な根拠が要求される。

「思料」 (かなり弱い要件だが、たとえば刑事訴訟法において捜査機関の活動に「思料」の要件を設けることは、憲法上許されない一般探索を規制する意義がある)

「相当な理由」・「相当の理由」

「充分な理由」・「十分な理由」

 

・判断

「認める」 要件裁量があるとする立法者意思を示す。ただし、パブリックフォーラムに当たる施設の利用許可の場合は条文の書きぶりに関わらず要件裁量が認められない。

「認められる」 この文言だけからは立法者が要件裁量の有無をどのように考えているか明らかでない。

 

・考慮要素の定め

 

・効果裁量

「できる」 効果裁量があるとする立法者意思を示す。

「ねばならない」効果裁量がないとする立法者意思を示す。

備え付けた物、場所

・備え付けた物

「工作物」 一般には、労力を加えて、土地に接着して設備された物をいい、建築物、橋、堤防、トンネル、電柱、井戸、パイプライン、記念碑等がこれに当たる。

「設備」 普通は、機械、器具その他の建設物に備え付けられる物を意味する。場合によっては、広く土地や家屋等の建設物を含む意味に用いられることもある。結局、その具体的範囲については、各法令の内容に応じて定まる*1

「施設」 「設備」と類似の意味に用いられるが、法令上は、物的設備とともに、それを動かすための人及びこれらを一体として捉えた事業活動全体を指す意味で用いられることが多い。

出典『法律用語辞典(第4版)』有斐閣

 

・公共の場所

「不特定かつ多数の者が利用する施設」

「公衆の出入りする場所」

「公共の場所」

 

・位置

「隣接」 くっついている

「近接」 必ずしもくっついているとは限らない

*1:筆者注 限界事例として、関税定率法別表95・08項にいう「巡回サーカス、巡回動物園又は巡回劇場の設備」があげられる。HS条約の公定訳と同様に正文にはない「設備」という語を補っているが、ここでいう「設備」には巡回サーカス又は巡回動物園の用に供する動物を含むと解されている。

公にすること

「公にする」という用語は最近ではあまり用いられず、「公表」「公示」「公告」等の方が用いられるという。

 

「公示」 一定の事項を周知させるために、一般公衆がこれを知ることのできる状態に置くこと。公の機関の発表について用いるのが例であるが、私人が一般に周知させるために発表する場合にも用いられる。 ≒「公にする」

「公表」 公にすることであって、積極的な周知(その形式は通常、官報、新聞紙等への掲載、インターネットの利用、掲示場における掲示等による)を伴う。但し、特殊な用法として金商法とくに166条4項。

「公告」ある事項を広く一般の人に知らせること。その目的、方法、効力等は一定でなく、それぞれの法律に定めるところによる。

「(公衆の)縦覧(に供しなければならない)」 一般に、書類、名簿等を誰にでも自由に見せることになっている場合に、これを見ること。異議の申立ての機会を与える等の目的で広く一般に見せる場合によく用いられる。選挙人名簿の縦覧(公選二三)、建築協定書の縦覧(建基七一)等に例がある。

「閲覧」 法令上は、文書の記載事項の確認、証拠としての援用等の目的で、関係者が官公署、会社等に備えてある記録、帳簿その他の文書の記載事項を調べる場合に用いることが多い。利害関係者による請求を待って見せる場合に多く用いられる。e.g. 「閲覧又は謄写の請求」

 

出典『法律用語辞典(第4版)』有斐閣