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第3章 逮捕・勾留(1)

設問についての問い

1.刑訴法212条1項の現行犯逮捕の要件は、犯罪が終わってから逮捕の着手まで30から40分以内で時間的に接着しており、かつ客観的外部的状況から犯人が逮捕者自身において直接覚知できるため誤認逮捕のおそれが少ないことである。これを本件についてみると、時間的に接着していないから現行犯逮捕の要件を具備していない。

そこで、2項の準現行犯逮捕の要件を具備しているかが問題となる。Xは贓物であるビール350ml缶1つと漫画雑誌1冊を所持しているから2号に該当する。また、「罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるとき」とは、被害者等の供述も含めた総合判断により犯行と犯人の結びつきが誤認逮捕のおそれが少ないと認められる程度に明白であり、かつ逮捕の着手まで3から4時間以内で時間的に接着し、かつ犯人の移動手段等から判断して逮捕に着手した場所が犯行現場から誤認逮捕のおそれが少ないと認められる程度に場所的に接着していることである。

これを本件についてみると、犯行から逮捕まで3時間を経過していないから、時間的接着性が認められる。また、贓物と同じ物を所持しているだけでなく、投げやりになったXが自らこの二点を手提げカバンから出したこと、W1とW2が警察官に事前に述べた青あざや服装といった身体的特徴と合致していること、W1とW2が犯人に間違いないと述べていることを総合すると、犯行と犯人の結びつきが明白であると認められる。また、Xが2時間15分後警察官Lにより発見された場所は1km先に満たないから、Xが徒歩で移動したことを考慮しても場所的接着性が認められる。

これに対して、弁護人としては、ビール350ml缶1つと漫画雑誌1冊というありふれていて贓物そのものであると物じたいからは特定できない物を所持していたこと以外で、犯行と犯人の結びつきの明白性の判断の資料となるものは結局はW1とW2の供述のみであって、誤認逮捕のおそれが少ないと認められる程度の明白性は認められないと反論することが考えられる。また、田宮刑訴p.77によれば、数時間経過した場合には「間がない」には当たらないから違法な逮捕である。

 2.刑訴法60条1項は、明文では勾留の相当性を要件として定めていないが、比例原則に適合するように解釈すれば、相当性は勾留の要件であると解される。そして違法な逮捕を甘受させた者にさらに後続の強制処分を甘受させることは相当性を欠く*1から、勾留請求は却下されるべきである。なお、相当性が勾留の要件でないとの解釈によっても、逮捕前置主義を定める204条1項を根拠に勾留請求は却下される。

3.刑訴法429条1項2号による勾留決定に対する準抗告をするか、刑訴法88条による保釈請求をすることが考えられる。

4.刑訴法210条は「直ちに」と定めているから、逮捕後7時間以上経過したこの令状請求は違法である。

5.既に勾留されているから、刑訴法429条1項2号の準抗告をする。

刑訴法199条にいう通常逮捕をするには、嫌疑が「相当な理由」といえる程度にあり(1項)、かつ「明らかに逮捕の必要がない」とはいえない(2項)程度に逃亡のおそれ・罪証隠滅のおそれがあり、かつ明文の定めはないが身体拘束に相当性があり比例原則に違反しないことが要件となる。

これを本件についてみると、身体拘束は極めて重要な利益の侵害であるところ、Xは一度は緊急逮捕令状請求のために身体拘束を受けているのだから、なんら逮捕の基礎となる事情に変更のない本件において、Xを通常逮捕してさらなる身体拘束を行うことは、相当性を欠く比例原則違反であり、違法である。仮に直ちに違法とまではいえないとしても、従前の身体拘束期間を考慮したうえで自由権規約9条3項(裁判官の面前に速やかに連れて行かれる権利)を間接適用して比例原則を適用すべきであって、たとえば勾留請求まで72時間をぎりぎり超えない時間の身体拘束をすれば形式的に刑訴法203条1項並びに205条1項及び2項に違反していなかったとしても、相当性を欠く長期の身体拘束として比例原則違反の違法である。

先行する逮捕手続が違法であるとき、さらに後続の身体拘束手続を甘受させることは相当性を欠き、本件勾留は比例原則違反の違法である。(あるいは逮捕前置主義を定める刑訴法204条1項違反である。)

6.警察官らが「直ちに」といえる期間を超過してしまったのは、Xが自発的に始めた弁解を録取していたためであって、警察官に身体拘束期間の制限を潜脱する意図はなかったと主張することが考えられる。これに対して、弁護人は、緊急逮捕の要件である嫌疑は、緊急逮捕を執行する時点での嫌疑であって、緊急逮捕後に録取した供述は疎明資料とならないとか、警察官に取調べのための持ち時間を稼ぐ意図があったと主張することが考えられる。

7.逮捕前置主義を定める刑訴法204条1項に違反する。当初の事件による勾留と別事件による逮捕・勾留が重なることとなる(いわゆる二重勾留)が、別の事件について逃亡のおそれ・罪証隠滅のおそれが認められないのが通常と考えるべきである*2

8.刑訴法208条1項の反対解釈により、起訴後、勾留中の被疑者は、当然に裁判所の職権による被告人勾留に移行する。なお、白取刑訴によれば、この際に勾留の必要性が低下していないか判断するため勾留質問をすべきである。

 

発展問題

1.出頭の求めについては刑訴法199条1項但書きに定めがあるが、これを捜査段階における出頭確保のための逮捕を認めた規定と解する見解がある。しかし、出頭確保それ自体を理由とする逮捕をみとめることは取調べ目的の逮捕を認めるに等しいからこの見解は採用できない。

もっとも、出頭要請を何度しても応じない事実は逃亡のおそれは推認させるから、適法に逮捕できる場合があるとする見解がある(判例もこのような推認を認める)。これによれば、裁判官は逮捕令状を発布すべきである。しかし、不出頭が重なるから逃亡のおそれがあるとする経験則があるかは疑わしいし、出頭を拒むことができると定める198条と整合しない。裁判官は、不出頭の事実以外から逃亡のおそれ・罪証隠滅のおそれを判断すべきである。

2.逮捕という比較的短期の身体拘束が前置されているにもかかわらず、さらに身体拘束をするということは、勾留の必要及びそれに応じた身体拘束の相当性が厳しく判断される。

これに対して、二度の司法審査により身体拘束について慎重を期しているとする見解によれば、勾留状発布においては、比例原則違反の有無ではなく、嫌疑の有無がより厳しく判断されそうである。しかし、この見解は199条1項の通常逮捕の「相当な理由」という文言と60条1項の勾留の「相当な理由」という文言に異なる意味をあえて読み込むほどの説得的な理由づけとはいえないから採用できない。

3.

 

コメント けっこう分からない

*1:中川『刑事訴訟法の基礎』p.60

*2:中川p.78