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第13章 訴因の変更

設例についての問い

1.9月16日午前6時45分ころ覚せい剤を所持したことと9月15日午後10時30分ころ覚せい剤を所持したこととは、両立する関係にあるから、公訴事実の同一性(刑訴法312条1項)の範囲外であって、訴因変更請求不許可決定をすべきである。

2.覚せい剤所持の罪は継続犯であって、途中で所持が中断したという事情はなく、客体とされる覚せい剤も旧訴因と新訴因で共通している。罪数論上一罪の範囲にはいる(刑罰関心の単一性がある)事実には複数の有罪判決が予定されておらず別訴の余地がないところ、刑罰関心の単一性があれば審判対象の変更を許すのが検察官が訴因設定権限を有する主張吟味型手続のあり方として合理的である。旧訴因と新訴因とは一罪の関係にあるから、公訴事実の同一性の範囲にあるものとして、訴因変更を許可すべきである。*1

3.4.訴因制度の趣旨は裁判所にとっての審判対象画定であって、訴因の特定の程度は他の犯罪事実から識別される程度に特定されれば足りるとする見解(識別説)によれば、特定の建造物に対する放火既遂は二度と起りえず、他方放火の方法は罪となるべき事実として必須の事実でないから、審判対象は画定されており、具体的な審理経過に照らし被告人を不意打ちしない限り、訴因変更を要しない。

しかし、識別説は刑訴法256条3項に反して訴因の特定すべき程度を緩め過ぎるから採用できない。訴因には被告人に防御の範囲を告知し、明確化する機能もあるから防御説を採用する。訴訟経済上訴因変更を要しない場合はあり得るが、訴因事実と認定事実を対比して被告人に防御上の不利益の生じる可能性がある場合、そのような事実認定は不告不理原則違反であって、378条3号の絶対的控訴理由に当たる。なお、防御説に立ちつつ被告人が防御しようと思えばできた場合には訴因変更が不要と解する見解もあるが、事件ごとに判断が異なり得る点や、検察官の主張しない事実が認定される可能性まで検討して防御する過重負担をしいられる点で妥当ではない。

5.Xが実行行為者であることに変わりはないのだから、訴因変更は不要であるようにも思える。しかし、被告人Xが従属的な立場にあれば共犯者の存在が重要な情状事実となり得るといったように、共犯者の有無は一般に被告人の防御にとって重要な事項であるから訴因変更が必要と解すべきである。このように解したとしても、裁判所は求釈明や訴因変更命令(刑訴法312条2項)により心証を開示して訴因変更の機会を与えることができるし、検察官も訴因変更手続は口頭ですることができるから、訴訟経済を害する程度はさほど大きくない。

6.過失が過失態様の違いによっては別の結果回避義務に違反した事実の認定として異なる構成要件をまたがるために訴因変更が必要となるのに対し、故意の種類が訴因と異なる事実認定は、訴因変更を要しないようにも思える。しかし、未必の故意が認定される事件では、一般に故意の有無が争点となり得るから訴因変更せずに未必の故意を認定することは防御上不利益の可能性があり、不告不理原則違反の事実認定というべきである。

 

コメント 中川『刑事訴訟法の基本』を参考にしましたが、中川説をとっても抽象的防御権説、具体的防御権説、識別説とひと通り書かなければいけないので、中川説は採っていません。

*1:鈴木茂嗣2002「公訴事実の同一性」刑事訴訟法の争点第3版参照