予備試験とか

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Ⅰ-10

(1)(a)1993年9月1日に、Xを賃貸人、Yを賃借人として、賃料月額40万円の甲1及び甲2賃貸借契約(民法601条)が成立した。本件賃貸借契約に基づき甲1及び甲2がYに引渡されていた。本件賃貸借契約には毎月末日に翌月分の賃料を支払う旨の前払特約がある。1996年9月30日には、1995年10月分から96年9月分までの賃料の支払期限が到来している。よって、当該賃貸借契約に基づく賃料480万円を請求する。

(b)(ア)民法611条により、賃借人Yは雨漏りにより使用できなくなった(「滅失」に準ずる状態になった)甲2部分に相当する賃料を支払う債務を負わないと主張する。(なお、改正前民法611条の解釈として、賃料減額請求の意思表示があってはじめて賃料が減額されるとする説もあるが、611条は占有移転の主張立証責任を賃貸人に負わせたまま、使用収益に適する状態にあることの主張立証責任を転換する規定と解すべきである。)これに対してXは、12月1日以降は甲2のうち一部屋以外は使用可能になったのだから、その限度で賃料を支払う債務があると一部否認することが考えられる。

(イ)(ウ)1996年3月31日、YのXに対する借地借家法32条1項にもとづく借賃減額請求の意思表示により、4月分以降の家賃は25万円となったから、90万円分は家賃を支払う債務を負わないと主張することが考えられる。地価の急激な下落は明文で定められている考慮すべき事情である。32条1項が明文で定める事情は例示であって借地に関する従前の経過も考慮すべき事情と解される*1から、甲1及び甲2の工事費用を投じたことは考慮すべき事情である。

(2)賃貸借契約が終了するとき、契約の効力により賃借物の返還債務が生じる(改正民法601条)。Xは賃料不払いを理由にYとの家賃40万円の本件賃貸借契約を解除し、甲1・甲2の明渡しを請求することが考えられる。本件賃貸借契約の成立、XがYに甲1及び甲2を明渡したこと、毎月末日に翌月分賃料を支払う賃料前払特約、期限の到来に加えて、賃料を2か月滞納したときにはXは無催告で契約を解除することができる旨の特約があり、10月賃料分と11月賃料分で2か月となるから、契約を解除することができる。また、無催告解除特約によらなくても、1996年3月31日Xは賃料減額には応じられない旨を述べることでYに対して期間を定めず賃料の支払いを催告し、その後9月30日には客観的に相当な期間を経過したから、契約を解除することができる(民法541条)。なお、無催告解除特約の有効性については、借地借家法は賃借人の義務である賃料不払を保護する趣旨ではないから、借地借家法30条の適用はない。

これに対してYは、民法611条により使用不能部分相当額の賃料債務がないことにより、賃料債務が25万円以下となったことを主張立証することが考えられる。なお、借地借家法32条1項にもとづく借賃減額請求による賃料減額部分は、Xが賃料減額に応じられない旨の意思表示をしていたことから、この条の2項により賃料債務履行遅滞の責任を免れない。そこで予備的に、賃料不払いが賃貸人に対する背信行為とまで認めるに足りない特段の事情があり「その契約及び取引上の社会通念に照らして軽微」(改正民法541条但書き)であることを主張立証して、解除権の行使を阻止することが考えられる。Yは評価根拠事実として、1996年10月分から1997年3月分の賃料が未払いだったのは、Xが甲4の修繕を怠ったというX側の事情によるものであったこと、4月賃料分以降についても、25万円は期限までに供託していたことを主張する。しかし、甲1の価格下落を加味しても適正賃料が月額30万円であることに照らすと、4月賃料分以降だけでも少なくとも5万円以上の賃料不払が6か月分あり、Xが賃料支払いを催告したこともあわせて考慮すると、賃料不払は軽微な事情とは認められない。

 

コメント

賃料不払が「その契約及び取引上の社会通念に照らして軽微」あるいは「信頼関係が破壊されたと認めるに足りない特段の事情」があるとされるのはどのようなときかの問題*2とか、特約の効力の問題とか、いろいろ分からない。

*1:借地借家法改正要綱試案第二部第三参照

*2:山本和彦『よくわかる民事裁判 平凡吉訴訟日記』にもあるように、「信頼関係」という用語に引きずられて契約当事者間の単なる人間関係を考慮すべきではないだろうけど、じゃあ何を考慮すべきなのか、、、